【重要ニュースまとめ(3/25~3/31)】FATFガイダンス修正案に各国団体から指摘が集まる。VisaがUSDCに対応、ステーブルコイン決済導入へ

今回は、3月25日〜3月31日の暗号資産・ブロックチェーン業界の重要ニュースについて、田上 智裕 氏(@tomohiro_tagami)に解説していただきました。

目次

  1. FATFガイダンスの修正案に各国業界団体から指摘
  2. アフリカ初のDeFiプロトコルがローンチ
  3. Visaがステーブルコイン決済を導入
  4. まとめ、著者の考察

今週(3月25日〜3月31日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、FATFガイダンスの修正案に対する各国業界団体からの指摘や、アフリカ初のDeFiプロトコルなどが話題になりました。また、VisaがステーブルコインUSD Coin決済に対応するなど、着実に実用化が進んでいる気配を感じさせます。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

FATFガイダンスの修正案に各国業界団体から指摘

2月に発表されたFATFガイダンスの修正案について、米国の業界団体であるCoin Centerが問題点を指摘しました。日本からも、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)がパブリックコメントの募集を行なっています。

以前のまとめ記事でも紹介した通り、今回の修正案では暗号資産に関して主に次のような内容が盛り込まれました。

  1. ステーブルコインに対するFATF基準の適用
  2. 公的部門および民間団体がトラベルルールに対応するための具体的な方法
  3. P2P取引に存在するリスクへの対応

これに対して真っ先に意見を述べたのがCoin Centerです。Coin Centerは、世界で最も有名な業界団体であり、BitGoやDCG、Grayscale、Kraken、Squareなどが資金提供を行なっています。

Coin Centerは、今回の修正案についてプライバシーとイノベーションを著しく阻害するとの問題点を指摘しました。具体的には、Non-Custodianへの監視強化による分散型ネットワークの特性が失われる点や、ビットコインのTaprootやZcashのゼロ知識証明といった秘匿化技術の排除に伴うプライバシーの侵害、トラベルルールの適用範囲拡大によるビジネスリスクなどです。

日本の業界団体であるJCBAからも、「過剰な規制導入につながり、決済利用を含めた暗号資産の適法な利用ひいては暗号資産業界の健全な発展に支障をきたすおそれが高いと考えております。」との声明が出されています。

FATFは、4月20日まで修正案に対するパブリックコメントを募集しており、JCBAは日本からも広く意見を募ることでFATFに対してパブリックコメントを提供する方針です。こういった世界的な情勢に対して日本からもアプローチが出てくることは非常に良いことではないでしょうか。

日々新しい取り組みが出てくる暗号資産業界では、規制当局とのいたちごっこが続いています。今週は昨今話題のNFTについても、米SEC理事のPeirce氏が注意喚起していました。

NFTはその性質上、有価証券に該当する可能性は低いものの、販売の仕方次第では証券法に抵触する場合もあるといいます。証券の定義は、暗号資産の登場によって年々広くなってきているとし、これまで参考にされてきたHoweyテストは必ずしも機能しない可能性があると言及しました。

【参照記事】【重要ニュースまとめ(2/25~3/3)】FATFがガイダンスを修正、トラベルルールの適用とステーブルコイン規制へ本格化。BraveはDeFiへの注力を発表
【参照記事】米SECクリプトママがNFTの証券性について言及、細分化された販売方法に対して注意を促す

アフリカ初のDeFiプロトコルがローンチ

Binance Smart Chainを使用したアフリカ初となるDeFiプロトコルが誕生しました。ナイジェリア拠点のXEND Financeが、既存金融にアクセスできないアフリカの15億人もの人々へ金融サービスを届けるため、貯蓄や貸付、投資などが可能なDeFiプラットフォームをローンチしています。

今や日本でも主に投資対象として市民権を得つつあるDeFiですが、その本質は金融包摂です。既存金融がサービスを提供しない所得の低い人々へ、スマートフォン1台あれば金融サービスを届けられるのがDeFi本来の性質でした。

日本にいるとあまり実感できませんが、世界中には銀行口座は持たないけどスマホは持っているという人々が何億人も存在します。例えば、今週弊社とのパートナーシップを発表した米国Celoは、金融アクセスのない人々に対して電話番号だけで送金が可能なアプリやステーブルコインを開発しています。

DeFiの起源は金融包括にありましたが、DeFiプロトコルが乱立するにつれて高い投資収益を得られるようになり、いつの間にか「富裕層の遊び場」と呼ばれる状況に陥ってしまいました。

実際、多くのDeFiプロトコルが利用するイーサリアムの取引手数料が増加し、1回の取引で数千円がかかってしまうことも珍しくありません。これでは、少額取引のニーズがある低所得層の人々にDeFiサービスを届けることはできないでしょう。

XEND Financeは、イーサリアムではなくBinance Smart Chain(BSC)を採用することで、取引手数料を安価に抑えることを優先しました。BSCは、Binanceを中心に少数のノードによって管理されているため、ビットコインやイーサリアムと比べると分散性に欠けますが、その分高い処理性能と安価な取引手数料を実現しています。

この利点を享受するために、昨今はイーサリアムではなくBSCを選択するDeFiプロトコルが少しずつ増えてきました。ブロックチェーン業界にはMVD(Minimum Viable Decentralization:必要最小限の分散性)という考え方があり、プロトコルの立ち上げ時は分散性よりもまずは使ってもらうことを重要視する傾向が出てきています。

BSCは分散性に欠ける分非常に高いスループットを誇るため、ネットワークが非中央集権型か否かを気にしないユーザーには支持されているのです。一方で、イーサリアム2.0やセカンドレイヤーの台頭が顕著になってきているため、今後はどのようなシェアの争いが繰り広げられるのか要注目ではないでしょうか。

【参照記事】FIRST DECENTRALIZED FINANCE (DEFI) AND BINANCE SMART CHAIN-BUILT COMPANY LAUNCHES OUT OF AFRICA
【参照記事】アフリカ発のDeFi信用組合プラットフォームが登場、金融包摂の実現へ

Visaがステーブルコイン決済を導入

クレジットカード決済大手のVisaが、USD Coin(USDC)に対応することで大手決済企業としては初となるステーブルコイン決済の導入を発表しました。

USD Coinは、米CoinbaseとCircleが共同で発行および管理するステーブルコインで、米ドルを担保資産にイーサリアム上で発行されています。今回の取り組みは、先日発表されたCrypto.comとの提携を通して実現したといい、将来的にはその他の暗号資産にも対応する予定とのことです。

これまでに、BlockFiなどが暗号資産を使った決済サービスを提供しており、Visaも既にプリペイドカードを発行しています。しかしながら、これらはいずれも内部で暗号資産と法定通貨を換金する仕組みを取っており、直接的な暗号資産決済が実現されていたわけではありません。

今回は、Visaが利用者からUSD Coinを直接受け付け、それを暗号資産カストディ大手のAnchorageに預けるというスキームを組むといいます。最終的にはVisaがUSD Coinを米ドルに換金することに変わりはありませんが、イーサリアムのエコシステムが現実世界に染み出すことができる点がポイントです。

またこのようなスキームを採用することで、処理性能の低いイーサリアムのスケーラビリティ問題に左右されることなく、Visaの決済ネットワークを使用することができます。Visaの決済システムは、秒間1500ものトランザクションを処理できるとされています。

Visaは、この仕組みを1年以内に他のパートナーにも展開していきたいと言及しました。Visaは、当然ながらブロックチェーンのようにネイティブトークンを保有しない決済ネットワークになるため、理論上は全ての暗号資産に対応することが可能です。CBDCについても同様の仕組みが適用できる可能性があるとしています。

Visaの競合であるマスターカードも、2021年中に暗号資産に直接対応した決済システムをローンチする予定であることを2月に明かしていました。Visaと同様、暗号資産を直接自社または管理可能なパートナーに預ける方法を検討しています。

また、CBDCへの対応方針も明確にしており、バハマのデジタルサンドドルを使ったプリペイドカードを既に発行しています。

【参照記事】Digital currency comes to Visa’s settlement platform
【参照記事】マスターカードが2021年内に暗号資産決済へ対応、各国とのCBDC発行計画も

まとめ、著者の考察

着実に暗号資産の実用化が進んでいるように感じています。旧称仮想通貨として浸透した新たな概念が、DeFiやCBDCに昇華することで広く一般に受け入れられるようになり、それに伴い規制当局の動きも目立つようになってきました。

FATFのガイダンス修正案を見ていて改めて感じますが、事例のないところに法律は定められないので、世界に遅れを取る日本が巻き返しを図るには、やはり自国発の取り組みを増やしていくことが重要だと言えるのではないでしょうか。

その際に注意すべきは、現行法に抵触しないからといって何をやっても問題ないという解釈は誤っているということです。将来的な法解釈次第では、過去の事例が提訴される可能性もあり、実際に今週は米SECが過去に実施されたLBRYのICOに対して訴訟を起こしています。

The following two tabs change content below.
田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。