【重要ニュースまとめ(3/18~3/24)】Web3.0の人の繫がりを可視化するトークングラフ、NFTで実現へ。DeFiを一歩先に進める分散型レピュテーションが話題に

今回は、3月18日〜3月24日の暗号資産・ブロックチェーン業界の重要ニュースについて、田上 智裕 氏(@tomohiro_tagami)に解説していただきました。

目次

  1. トークングラフでWeb3.0の繋がりを可視化する
  2. 金融包摂の実現に欠かせない分散型レピュテーション
  3. Webメディアの収益モデルを刷新
  4. まとめ、著者の考察

今週(3月18日〜3月24日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、トークンを使った人の繋がりを表すトークングラフや分散型レピュテーションなどが話題になりました。その他にも、米暗号資産メディアDecryptによる独自トークンの試みも開始しており、ますますの盛り上がりをみせています。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

トークングラフでWeb3.0の繋がりを可視化する

インターネット上における人の繋がりを表す「インタレストグラフ」や「ソーシャルグラフ」といった言葉が誕生して久しいですが、ブロックチェーンの登場により新しい考え方が定着しつつあります。

「トークングラフ」と呼ばれる新たな概念では、NFTを活用することで匿名性が前提のWeb3.0の世界における繋がりを可視化しようとしています。トークングラフは、NFTによって保有者の趣味嗜好を特定する概念です。

NFTの保有者(正確にはウォレットアドレス)がどんなNFTを保有しているのかを参照することで、匿名の状態で趣味嗜好などのデータを収集することができます。NFTには保有者を表す識別子(deedID)が付与されており、この識別子に紐づくウォレットアドレスを辿ることで、他にどのようなNFTを保有しているかを明らかにすることが可能です。

背景にあるトレンドとして、昨今はオンラインイベントの参加者に対してNFTを配布する取り組みが浸透してきています。この動きを利用することで、NFTの保有者が過去にどのようなイベントに参加していたかを特定することができるのです。

これをマーケティングに応用すると、例えば「このNFT保有者にのみプロモーションを行う」といったことが可能になります。

これまでのインターネットマーケティングでは、GoogleやFacebookがユーザーのデータを独占的に収集することでターゲティング広告を行なってきました。我々ユーザーは、これらのサービスを無料で利用できる代わりに行動データなどを提供する状況に陥っています。

しかしながら、社会は個人を重視する時代へと徐々に入ってきており、Fat Protocol理論でも提唱されたように、アプリケーションがデータを独占する時代は終わりつつあります。このような状況の中で、インタレストグラフやソーシャルグラフに依存しない新たなマーケティングの形が求められているのではないでしょうか。

そのための1つの概念がトークングラフであり、時代の先をいくブロックチェーンだからこそできることだと考えられます。NFTはその性質から投資対象としての価値ばかりが注目されていますが、本質的には存在証明や権利証明がポイントです。

トークングラフは、デジタルデータを唯一無二のものにするNFTにしかできない概念であり、NFTの本質を捉えた正しい活用事例だと言えるでしょう。

【参照記事】【独占取材】NFTの次のフェーズはトークングラフ(Dapper Labs NBA Top Shot プロデューサー Benny Giang)

金融包摂の実現に欠かせない分散型レピュテーション

今週のDeFi界隈で話題になっていたのが、分散型レピュテーションです。文字通り、信用を分散化したものであり、Web3.0の到来をまた一歩近づけるための仕組みだと言えそうです。

既知の通り、ブロックチェーンには特定の管理者が存在せず、またブロックチェーン上に構築されるアプリケーション群にも特定の管理者が存在しないものが多くなっています。これは、従来の集権型サービスでは実現できなかったことが多数あることに起因し、もはや当たり前の考え方として定着してきました。

しかしながら、管理者が存在するからこそ成り立つサービスがあることもまた事実です。例えば、金融サービスでは融資の際の利率を決める役割や、保険を適用する条件を判断する役割を担うために管理者が存在します。

現状のDeFiレンディングプロトコルでは、世界中の誰もがアクセスできる反面、全員が同一の利率に設定されています。

DeFiの本質は金融包摂であり、世界中の誰もがアクセスできることに意味があるものの、人によって用途は異なります。例えば、所得の高い人々はDeFiを投資対象として利用していますが、所得の低い人々は家族への仕送りや事業を行うための借り入れ先として利用しているのです。

このような状況下では、全ての人に対して同一に利率を設定することは好ましくありません。例えば、投資対象として利用する人には高い利率を設定し、仕送り手段として利用する人には低い手数料を設定するなどの区別があっても良いのではないでしょうか。

実際、利率や手数料が同一であるがために、昨今のDeFiは「富裕層の遊び場」と揶揄されるほど手数料が高騰してしまい、本来の目的である金融包摂を実現できていません。

そこで期待されているのが分散型レピュテーションです。分散型レピュテーションは、特定の管理者が存在しない環境下で生成されたデータを活用することで、その人の信用を測る仕組みです。

既存の信用スコアのようにSNSでの活動や決済履歴を使用してはDeFiが分散化されている意味がなくなってしまいます。そのため、分散型レピュテーションを活用することにより、信用データの生成に関しても管理者を排除した状態で行おうとしています。

現時点では概念提唱の段階を越えませんが、例えば過去のDeFi市場における利用履歴を参照することで、当該ユーザーがどのような所得を有しているかを判断したりすることができる可能性があるでしょう。

具体的には、主に金額の高いトランザクションを生成しているユーザーは高所得者として区分し、金額の低いトランザクションを生成しているユーザーは低所得者として区分する、といったアイデアなどがあげられます。

【参照記事】Decentralized Reputation is About to Open a New Web3 Frontier: Kevin Owocki

Webメディアの収益モデルを刷新

大手暗号資産メディアのDecryptが、Decrypt Tokenをローンチしました。開発には約2年かかっていたみたいで、元々は2020年の第二四半期を予定していましたが、このタイミングになったことでDecryptとしても待望のローンチになった格好です。

Decrypt Tokenは、イーサリアム上に発行されるユーティリティトークンで、記事の読了やシェア、いいねなどのアクションをすることで獲得できます。獲得したトークンは、将来的にNFTとして発行されるDecryptのオリジナルグッズやアート作品などと交換できるようになる予定です。

私自身も、約半年前から進められてきたパイロットプログラムに参加していましたが、例えば似たような記事を読むのであれば他メディアではなくトークンがもらえるDecryptで読もうという動機付けには確かになっていました。

興味深かったのは、記事の読了をどのように判断するかという点で、これについては記事ページに何秒以上滞在したかによって判別しているように見受けられました。

今回のローンチに伴い、イギリスを除く全ユーザーがDecrypt Tokenにアクセスできるようになっています。ローンチパートナーにはFilecoinが選ばれており、共にDecrypt Tokenの普及活動を行なっていくとしました。

なお、現時点ではFilecoin関連の記事を読んだからといってファイルコイン(FIL)が付与される訳ではありませんが、将来的にはこのような取り組みも出てくることが予想できるでしょう。

Decryptは、Webメディアでありながらこれまでの常識であったバナー広告などの収益モデルを採用していません。従来の広告ベースのWebメディアには限界がきていると主張しており、新たな収益モデルを模索しなければならないフェーズが到来していると言及していました。

実際、次世代ブラウザBraveでも、データを収集するためのスクリプトをブロックすることで結果的にバナー広告や動画広告を非表示にしています。この特徴が功を奏し、世界中で急激な成長を遂げており、ユーザーがいかに広告を嫌っていたがが浮き彫りとなりました。

Decryptは、広告モデルからトークンモデルに移行することで、今回のFilecoinのようにイメージを損ねることなくスポンサーの認知を拡大することができるとしています。

実際のところ、すぐにトークンモデルが成功するかどうかはわかりませんが、Decryptには月間460万ものアクティブユーザーが存在し、その全てがDecrypt Tokenを保有する状況になれば、トークン価格にも変化が表れ、十分な収益源として機能するようになるかもしれません。

【参照記事】Decrypt Launches Its First Token Season With Filecoin
【関連記事】米暗号資産メディアDecryptが独自トークン「Decrypt Token」をローンチ、ビジネスモデルの刷新へ

まとめ、著者の考察

今週は、トークングラフや分散型レピュテーションといった抽象的かつ先端的なトピックについて取り上げてみました。日本ではあまり話題になっていませんが、海外では活発に議論が行われており、いずれ日本にも入ってきそうな概念です。

こういったトピックは、各領域でどのような課題が生じているかをベースに提唱されており、ここでもやはり基礎的な知識の重要性を感じます。

業界は日々目まぐるしいスピードで変化しており、Decrypt Tokenのような新たな試みも、将来的には当たり前になる時代が訪れるかもしれません。Webメディアとしては、広告モデルからトークンモデルへの移行が正しいのかどうか、興味深いトピックとしてあげられそうです。

個人的には、分散型レピュテーションの事例が今年のうちにある程度出てくるのではないかと予想しています。

【関連記事】イーサリアムとは?特徴・仕組み・購入方法

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。