【重要ニュースまとめ(3/11~3/17)】巨額売買が続くNFT市場、税務処理では注意点も。イーサリアムが新旧チェーンの早期統合へ

今回は、3月11日〜3月17日の暗号資産・ブロックチェーン業界の重要ニュースについて、田上 智裕 氏(@tomohiro_tagami)に解説していただきました。

目次

  1. 活発なNFT市場と注意すべき税制
  2. 驚異的な成長を遂げたステーブルコイン
  3. イーサリアム新旧チェーンの統合を優先事項に
  4. まとめ、著者の考察

今週(3月11日〜3月17日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、NFTに関する様々取り組みが話題になりました。その他にも、引き続きステーブルコインやイーサリアムの新旧チェーンの統合といったトピックが注目を集めています。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

活発なNFT市場と注意すべき税制

今週もNFTに関する取り組みが相次いで話題となりました。4つのニュースについて紹介していきます。

デジタルアーティストBeeple氏のNFTアートが、人気オークションハウスのクリスティーズで開催されたオークションで約6,935万ドルで落札されました。これは、存命する全てのアーティストの中でもトップ3に入る金額になるといいます。

Beeple氏のNFTアートを落札したのは、NFT特化型ファンドMetapurseを経営するMetakovan氏です。彼は今回の作品を10億ドルの価値があるものと評価しています。

NFT作品の販売について、今週はフードチェーン大手のタコベルも参入し話題となりました。タコベルは、NFTマーケットプレイス大手のRaribleを通して5種類のNFTを販売しています。

NFT作品の特徴は、セカンダリーマーケットでのCtoC売買が気軽に行える点にあります。デジタル世界で全てが完結するため、売買のマッチングや決済、作品の検索などをスムーズに行うことが可能です。

タコベルが販売したNFT作品も例に漏れず、セカンダリーマーケットで次々と売買が行われています。これに伴い価格も高騰しており、当初タコベルが販売した0.001ETHから、現在は10ETHにまで高騰しているものがほとんどです。

昨今はRaribleのようなマーケットプレイス(セカンダリーマーケット)が次々と誕生しており、NFT市場を牽引する存在となっています。

そんなNFT市場について、今週は暗号資産・ブロックチェーンに関する分析サービスを提供する米Messariが解説レポートを公開しました。レポートでは、NFTの特徴や事例、NFTに対する誤解などについて解説されています。(詳細は参照ソースをご覧ください)

これまでのデジタルコンテンツは、良くも悪くも簡単にコピーすることができていたためそれに伴う弊害も発生していました。NFTは、デジタルコンテンツに紐づけることで唯一無二の存在として発行することが可能です。

昨今は投機需要による金銭的な価値にばかり注目が集まっていますが、プログラム可能でありながらもコピーや改ざんができないデジタル資産として発行できる点にこそ、NFTとしての真の価値があります。

NFTに関するニュースの最後に、米Forbesが公開したNFTに関する税制についての解説を紹介します。本解説は米国における税制について言及したものですが、基本的な考え方は日本における税制にも適用することができるでしょう。

NFTに対して税制を気にすべき人は、クリエイターと投資家に大分できます。それぞれ、どのタイミングで税金が発生するかの違いがあるため注意が必要です。

まずクリエイターは、作成したNFT作品を販売した時点が課税のタイミングとなります。作成しただけでは当然課税されず、作品が売れることにより収益を得たタイミングで課税されます。作品の販売を主な事業にしている場合は、事業を行う上で発生した必要経費を控除することが可能です。

一方の投資家は気にすべき点がいくつか存在します。まずは購入したNFT作品を売却した場合に発生するキャピタルゲイン課税です。キャピタルゲイン課税は、文字通り購入額と販売額に差が発生していた場合に、その収益に対して課せられる税金になります。

このとき注意すべきは、NFT作品を購入する際に使用した決済手段が何であるかという点です。現状NFT作品を購入するには、ほとんどの場面でイーサリアムを使用します。イーサリアムなどの暗号資産を決済で使用する場合、決済=利確と定義されているため、決済と同時にイーサリアムそのものにもキャピタルゲイン課税が発生するのです。

NFTに対する直接的な課税ばかりを気にしているがために、決済手段として使用したイーサリアムに対する課税を忘れないよう注意しなければなりません。

【参照記事】Explain It Like I Am 5: NFTs
【参照記事】How Are Non Fungible Tokens (NFTs) Taxed?
【関連記事】MessariがNFTの包括レポートを公開、特徴や事例、発行方法、一般的な誤解について解説

驚異的な成長を遂げたステーブルコイン

GMOグループの米法人GMO Trustが、2020年のステーブルコイン市場に関する詳細なレポートを公開しました。主な指標は以下の通りです。

  • 総供給額:59億ドル → 542億ドル(約900%増)
  • 月間取引額:235億ドル → 3,840億ドル(約1,600%増)
  • 日次アクティブアドレス:5万3,000 → 30万7,000(約580%増)
  • 日次取引数:9万8,000 → 59万4,000(約600%増)

いずれの数値も通常の市場データとしては考えられないほどの急成長を遂げています。要因としては、DeFi市場の盛り上がりが指摘されており、2021年は少し落ち着いた成長幅になることが予想できるでしょう。

現在流通しているステーブルコインのうち、全体の7割がイーサリアム上に発行されているといいます。そのためガス代の高騰による影響を強く受けており、1度の取引あたりの金額も100ドル〜1万ドルのものが全体の約7割を占めています。

ステーブルコインは非常に多くの種類が既に発行されているものの、アジア圏ではTether(USDT)が、アメリカ圏ではUSD Coin(USDC)が大部分のシェアを持っています。

ステーブルコインはDeFi市場における基軸通貨としての役割も担う存在です。以下の図は、ステーブルコインがどの領域のサービスに使用されているかを表しています。レンディングや分散型取引所(DEX)を中心に、デリバティブ取引や決済手段としても使用されているようです。

ステーブルコインには、「法定通貨担保型」「暗号資産担保型」「無担保型」の3つの種類が存在します。大部分は法定通貨担保型のステーブルコインとなっており、全体の99.5%が米ドルを担保に発行されているといいます。

そのためステーブルコインの発行体は、ステーブルコインを発行するための担保資産となる米ドルを豊富に蓄えておかなければなりません。以下の図は、各ステーブルコインの発行体による資金調達額とスキームを表したものです。

数としては、法定通貨(緑色)で調達してそのままステーブルコインの担保資産に組み込むケースが多いように見えます。この場合、ステーブルコインの利用者は発行体への絶対的な信用が前提条件になるため、分散型の思想からは離れることになってしまいます。

【参照記事】Stablecoins: Bridging the Network Gap Between Traditional Money and Digital Value — Brought to you by GMO Trust

イーサリアム新旧チェーンの統合を優先事項に

2020年末よりスタートしたイーサリアム2.0ですが、現在ブロック生成が進んでいるイーサリアム1.0のチェーンとイーサリアム2.0のチェーンを早期に統合させる提案が話題になりました。

イーサリアム2.0では、元々は以下のようなロードマップが整備されていましたが、必ずしもこの通りに実装していく必要はないとした上で、シャーディングの実装よりも先に並存しているチェーンの統合を進めていくとしています。

  • フェーズ0:ビーコンチェーンの稼働、ステーキングの開始(ローンチ済み)
  • フェーズ1:シャーディングの実装、シャードチェーンのテスト稼働
  • フェーズ1.5:シャードチェーンのメイン稼働、PoSへの移行開始
  • フェーズ2:シャードチェーンのフル稼働

チェーンの統合を優先する理由としては、シャーディングの実装難易度が想定よりも高かったことや、ステーキングのためにロックされているETHをチェーンの統合によって解放することなどがあげられています。

さらに、イーサリアム1.0が採用しているPoWからイーサリアム2.0の採用するPoSに早期移行することで、マイナーによる結託を牽制する目的もあるとのことです。

現在、イーサリアムではEIP-1559の実装が進められていますが、マイニング報酬が削減されることから多くのマイナーがこれに反対している状況になっています。そのため、早期にチェーンを統合しコンセンサスアルゴリズムをPoWからPoSにしてしまうことで、そもそもマイニング自体を不要にしてしまおうという考え方です。

なお、チェーンが統合するからといってすぐにイーサリアム1.0のチェーンが不要になるわけではありません。今回提案されている内容としては、ブロック生成とステートの管理はイーサリアム1.0のチェーンで引き続き行い、コンセンサスのみイーサリアム2.0のチェーンで行うというものになります。

昨年末にイーサリアム2.0が数年越しでスタートしたことから、フェーズ2でシャーディングが実装されるまでにまた数年を要するだろうとの予測が飛び交っていましたが、現時点では想定よりも早く開発が進んでいる印象を受けています。

【参照記事】Why the Merge Should Be Prioritized Over Data Sharding : ethereum

まとめ、著者の考察

ここ数週間はNFTに関する話題で持ち切りの状態が続いています。ここまでの話題を集める要因としては、DeFiやイーサリアム2.0などと違ってNFTがイメージしやすいものだからといえるでしょう。

ゲームやアートは視覚的に認識することができ、NFTが解決する課題も一般的な人々が理解しやすいものだといえます。一方で、DeFiと同じく本質からかけ離れた投機筋ばかりが盛り上がりを見せているため、いずれ収束する可能性もゼロではなさそうです。

バブルの弾けたDeFi市場では、ステーブルコインの分野でも確実な活用例が誕生してきており、より本質的な発展を遂げているといえるでしょう。Web3では、米ドルや日本円などの法定通貨を単にデジタル化しただけでは機能しないため、基軸通貨としてステーブルコインが必要になります。

NFTを購入する際の支払い手段としても、イーサリアムではなくステーブルコインを使用することで不要なキャピタルゲイン税を課されなくて済みます。ブロックチェーンを考察する上で、ステーブルコインは1つの重要なトピックとして市場概況や事例などを把握しておくことをおすすめします。

【関連記事】イーサリアムとは?特徴・仕組み・購入方法

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。