【重要ニュースまとめ(3/4~3/10)】DeFiを機関投資家へ、AaveがTaurusと提携。Compoundはクロスチェーンプラットフォームを公開

今回は、3月4日〜3月10日の暗号資産・ブロックチェーン業界の重要ニュースについて、田上 智裕 氏(@tomohiro_tagami)に解説していただきました。

目次

  1. AWSがイーサリアムのサポートを開始
  2. Compoundがクロスチェーンプラットフォームを公開
  3. AaveとTaurusが提携して機関投資家へDeFiを提供
  4. まとめ、著者の考察

今週(3月4日〜3月10日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、CompoundのクロスチェーンプラットフォームGatewayやTaurusとAaveの提携などが話題になりました。またAWSがイーサリアムのサポートを開始しており、エンタープライズブロックチェーンの領域でも一層の盛り上がりが期待できる状況になってきています。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

AWSがイーサリアムのサポートを開始

米アマゾンのクラウド事業AWSにて展開されている企業向けブロックチェーン開発サポートサービスAmazon Managed Blockchain(AMB)が、イーサリアムのサポート開始を発表しました。

AMBはフルマネージド型のサービスで、Hyperledger Fabricやイーサリアムといったブロックチェーンに対応しています。AMBを活用することで、パブリックチェーンのネットワークに簡単に参加することができ、カスタマイズしたプライベートチェーンを構築することも可能です。

一般的に、ブロックチェーンを使ったアプリケーションを開発する際には、インフラの管理と運用に多くの時間を割く必要がありました。AMBを使うことで、利用者はアプリケーションの開発に専念することができるのです。

これは、AWSが通常のWebアプリケーションを開発する際に解決した課題と同じことをブロックチェーンで実現することを意味します。

今回、AMBがイーサリアムに対応したことで、イーサリアムのノードを数分で簡単にセットアップできるようになりました。イーサリアムには、メインネットと呼ばれる本番環境とテストネットと呼ばれる開発環境が存在します。

AMBでは、メインネットはもちろんテストネットにも接続することができ、どのテストネット(RinkebyやRopstenなど)を使用するかを管理画面から簡単に選択することもできるのです。

具体的な手順としては、AMBからフレームワークを選択し、パブリックチェーンのネットワークに参加するかプライベートチェーンを新たに構築するかを選びます。プライベートチェーンを選択した場合、他のAWSアカウントを招待することが可能です。

その後、ブロックチェーンに記録されているデータを保存するためのノードを選択します。選択したノードを通して、開発したアプリケーションをブロックチェーンネットワークに展開することが可能です。

AMBがこのタイミングでイーサリアムへの対応を開始したことから、エンタープライズブロックチェーンの領域がますます盛り上がってきていること見て取ることができるのではないでしょうか。

ロンドン拠点のブロックチェーン特化型ファンドLeadBlock Partnersによると、2020年時点で欧州におけるエンタープライズブロックチェーンは、イーサリアムが最も多くのシェアを獲得しているといいます。全体の27%をイーサリアムが、20%をHyperledgerが、16%をCordaが占めている状況です。

エンタープライズに限らず、ブロックチェーンを使ったアプリケーションの開発にはイーサリアムが選ばれることが多くなっています。最近はDeFiやNFTといったサービスが注目を集めていますが、いずれもイーサリアム上に開発されることが多い状況です。

こういった人気サービスとの互換性を考慮した場合に、エンタープライズでもイーサリアムを選択すべきであると考えられているのではないでしょうか。

【参照記事】Ethereum on Amazon Managed Blockchain の一般提供を発表
【参照記事】AWSがイーサリアムに対応、Hyperledgerに続き企業向けサービスを強化

Compoundがクロスチェーンプラットフォームを公開

人気DeFiレンディングプロトコルのCompoundが、独自のクロスチェーンプラットフォーム「Gateway」のプロトタイプを公開しました。Gatewayを使用することで、異なるブロックチェーンのネイティブトークンを担保に別のブロックチェーンのネイティブトークンをCompoundで借り入れることができるようになります。

現状、特定のブロックチェーンのネイティブトークンを別のブロックチェーンでそのまま取り扱うことはできません。例えば、イーサリアム(ETH)をビットコインのブロックチェーンでそのまま動かすことはできないのです。

しかしながら、イーサリアム上に展開されているDeFiやNFTといった人気市場に、イーサリアム以外の資産を流入させたいといった需要は一定数存在します。そのため、現時点ではラッピングという仕組みで他のブロックチェーンに資産を移すことが多くなっています。

具体的には、ビットコイン(BTC)を担保にすることで発行される擬似的なイーサリアム(ETH)であるWBTCなどがあります。この仕組みを実現するには、ビットコインとイーサリアムの間に担保資産の管理とトークンを発行する仲介機関が必要です。

Gatewayでは、ラッピングを行うことなく異なるブロックチェーンのネイティブトークンを取り扱うことができます。例えば、Gateway上ではイーサリアム(ETH)を担保にPolkadot(DOT)を借り入れることが可能です。

Gatewayは、ビットコインやイーサリアムのようなパブリックチェーンとして機能します。そのため、バリデータと呼ばれるノードによってネットワークは管理され、Compoundと同様のガバナンストークンCOMPが流通する仕組みとなっています。

現時点ではイーサリアムにのみ対応しており、対応するブロックチェーンを順次追加することで異なるブロックチェーンのネイティブトークンをサポートできるようにする計画です。

DeFiプロトコルの1つであったCompoundからこのようなインフラシステムの取り組みが発表されることは珍しいですが、課題意識としてはやはりイーサリアムのスケーラビリティ問題があげられるでしょう。

Compoundはイーサリアム上で稼働しているサービスであり、スケーラビリティ問題に伴うガス代の高騰に悩まされています。そのため、Compoundをイーサリアム以外のブロックチェーンに対応させる計画が進められており、そこからGatewayの発想に至ったと考えられます。

考え方としては、イーサリアム以外のブロックチェーンに1つずつ対応していくのであれば、全てをまとめて対応できる基盤システム(Gateway)を作ることで開発コストを抑えようというものでしょう。

【参照記事】Introducting Gateway: the open, distributed ledger for cross-chain interest rate markets | Compound

AaveとTaurusが提携して機関投資家へDeFiを提供*

Compoundと並び人気を集めるDeFiレンディングプロトコルのAaveが、デジタル資産の管理サービスを手がけるスイスのTaurusとの統合を発表しました。これにより、Taurusのサービスから直接Aaveの機能(入出金、貸借、Aaveトークンの取得など)を利用できるようになります。

DeFiプロトコルは、基本的に他のプロトコルのスマートコントラクトを接続する場合、ホワイトリスト制というものを採用しています。これは、一般的なWebアプリケーションにおけるAPI(Application Programming Interface)と同じ考え方を持っているものです。

APIは異なるアプリケーション同士を繋ぐ際に使用されるもので、どちらか一方が他方のAPIを使用できるよう開発を行います。スマートコントラクトでも同様の仕組みが採用されており、今回のケースではAaveが使用しているスマートコントラクトをTaurusが利用できるように対応するといった具合です。

Aave側では、TaurusがAaveのスマートコントラクトを利用することを許可するだけであり、これをホワイトリストに載せるという言い方をします。

Taurusは、暗号資産を含む様々なデジタル資産を取り扱うプラットフォームを提供しており、主に機関投資家や銀行などの金融機関を顧客に持っています。今回Aaveを統合した背景には、Taurusの顧客によるDeFiへの需要の高まりがあったといいます。

まだまだ黎明期であるDeFiは、機関投資家や金融機関には取り扱いのハードルが高く、Taurusのような使い慣れたサービスからアクセスできることの価値は高いと言えるでしょう。

このようなDeFiプロトコルの統合は他のサービスでも積極的に進められています。例えば、人気イーサリアムウォレットのMetaMaskや次世代ブラウザBraveでもこの動きが行われてきました。

Aaveも、昨年時点でイギリスの規制当局より電子マネー機関としてのライセンスを取得しており、法定通貨を使ってDeFiプロトコルを利用できるような仕組み作りを進めています。

DeFiプロトコルを使用するには暗号資産が必要になるため、法定通貨を取引所で暗号資産に換金しなければなりません。これには、取引所のアカウントを作成したり本人確認が必要だったりと多くの手間がかかります。

Aaveの取り組みが進み法定通貨で直接DeFiプロトコルにアクセスできるようになれば、さらなるDeFi市場の発展が期待できるでしょう。このように、昨今は既存金融とDeFiの境目が少しずつ小さくなってきているのです。

【参照記事】TAURUS – next generation digital assets platform: Taurus and Aave announce strategic collaboration

まとめ、著者の考察

今週も引き続きDeFi領域からいくつかの目立った発表がありました。今回紹介したCompoundとAaveは、長らくDeFi市場を牽引してきた存在であり、クロスチェーンや既存金融との融合などDeFiにとどまらない取り組みを積極的に行なっています。

今後も様々なサービスがDeFiに参入してくることが予想され、ルール整備やUI/UXといった文脈での取り組みも徐々に必要性が高まってくることでしょう。

DeFi以外の領域では、AWSがイーサリアムのサポートを開始したことでエンタープライズブロックチェーンが更に盛り上がることが予想されます。ブロックチェーン以外の領域で大きな影響力を持つAWSのようなプレイヤーが対応を強めることで、ブロックチェーンを一気に普及させることに繋がるのではないでしょうか。

【関連記事】イーサリアムとは?特徴・仕組み・購入方法

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。