【重要ニュースまとめ(2/18~2/24)】DeFiプロトコルで大規模清算が発生。加熱するNFT市場とCBDCへの対応

今回は、2月18日〜2月24日の暗号資産・ブロックチェーン業界の重要ニュースについて、田上 智裕 氏(@tomohiro_tagami)に解説していただきました。

目次

  1. DeFiプロトコルで強制清算
  2. Braveでブラウザから直接NFTを購入できるように
  3. バハマと日本のCBDC
  4. まとめ、著者の考察

今週(2月18日〜2月24日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、暗号資産価格の暴落によるDeFiプロトコルの強制清算が話題になりました。一方で、注目のNFT市場ではBraveの取り組みが出たり、引き続きCBDCに関する動きも目立ってきています。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

DeFiプロトコルで強制清算

今週発生した暗号資産価格の暴落により、DeFi市場で大規模な清算が発生しました。DeFi銘柄の時価総額が10%ほど下落したことで、MakerDAOやCompound、Aaveといった主要DeFiプロトコルで、計1億ドル規模の強制的な清算が起きています。

DeFiレンディングプロトコルでは、特定の資産を担保にトークンを借り入れる仕組みになっています。例えばMakerDAOでは、ETHやBATを担保にステーブルコインDAIを発行することが可能です。

このとき担保資産には担保率が設定されており、MakerDAOの場合は150%と定められています。具体的には、1万円分のDAIを発行するには担保として1.5万円分のETHが必要になるということです。

しかしながら、ETHの価格が下落することで担保資産として1.5万円分の価値を維持できなくなってしまった場合、強制的に担保資産が清算されてしまいます。そのため、通常は150%ギリギリで資産を預けずに余裕を持たせますが、市場の急落が起きた場合には清算される前に担保資産を回収するなどの対応が間に合わないのです。

DeFiプロトコルは基本的に全てスマートコントラクトによって制御されるため、手動で誰かが助けてくれるといったことにはなりません。常にこのようなリスクと隣り合わせなのです。

過去にも同様の強制清算は起きており、コロナショックの際には1,700万ドル分が、DeFiバブルが弾けた際には9,300万ドル分が清算されています。

また、これに拍車をかけているのがイーサリアムのスケーラビリティ問題です。DeFiプロトコルの利用者は常に強制清算のリスクを抱えているため、市場の急落に備えていつでも借り入れた資産を返却し担保資産を回収する準備をしています。

しかしながら、市場の急落で取引が活発になるとイーサリアムのスケーラビリティ問題が顕在化してしまいます。価格は下落しているのにトランザクションが承認されないため、借り入れた資産を返し担保資産を回収することができないのです。

そしてこのような事態に陥らないよう利用者は優先して自らのトランザクションを承認させるため、手数料(ガス代)を引き上げようと考えます。その結果、ガス代が高騰する悪循環が続いてしまうのです。

【参照記事】DeFi Hit With Record Liquidations Amid Market Slump

Braveでブラウザから直接NFTを購入できるように

WebブラウザのBraveが、Non-Fungible Token(NFT)をブラウザから直接購入できる新機能を追加しました。Braveの公式オンラインストアであるSwag Storeを通してNFTを購入することができるようになります。

Swag Storeは、Braveの公式グッズが販売されているオンラインストアです。Origin Protocolの提供する分散型eコマースプラットフォームのDshopを使って構築されており、ストア内の行動履歴などが収集されない仕様になっています。

Dshopは、IPFSによってネットワーク通信されている点が特徴的です。つまり、Dshopで管理されるデータは分散的に保管され、特定のサーバの影響を受けることがなくなります。

Braveは、今年に入ってIPFSへのサポートを開始していました。当時は単に「ipfs://~」で始まるWebサイトを閲覧することができるようになったと報じられましたが、この時の対応が今回の取り組みに活きているのです。

Braveは、Dshopを活用することでユーザーのプライバシー保護を重視したeコマースを作ることができるとしています。Braveが分散型のブラウザであるのに対して、Origin Protocolは分散型のマーケットプレイスといえるでしょう。

Origin Protocolによると、現状のマーケットプレイスは管理者による手数料の値上げや利用規約の変更により、利用者の便益が搾取されている状態にあるといいます。そのため、Origin Protocolは自らがマーケットプレイスになるのではなく、分散型のマーケットプレイスを構築するためのプロトコルやツールを提供する役割を担っています。

Dshopもその一つであり、BraveのSwag Storeはこのサービスを使用することで分散型のマーケットプレイスを運営しているのです。

Braveのユーザーは、ETHかBATを使ってSwag Storeで販売されているNFT化されたグッズを購入することができます。Braveにはウォレット機能も実装されていますが、Swag StoreではMetaMaskを通して支払いを行うことが可能です。

昨年末より日本でもNFT市場が急速に盛り上がってきており、Braveもこの波に乗った格好となりました。今週はNFT市場をリードするDapper Labsが2.5億ドルの巨額調達を発表するなど、更なる盛り上がりをみせています。

ブロックチェーン上に発行されるトークンというと、これまではユーティリティトークンと呼ばれる識別子のない種類のトークンが一般的でした。NFTは識別子のあるトークンとして発行されるため、そのトークンを唯一無二のものとして存在させることができます。

この特性を活用することで、クリエイターが自身の作品をNFTとして発行しオークションにかけたり、著作権をNFTに紐づけることで管理するといった取り組みが続々と出てきています。

【参照記事】Brave Introduces Support for NFT Purchases on the Brave Swag Store, Powered by Origin

バハマと日本のCBDC

マスターカードが、バハマで実用化されているCBDCに対応したプリペイドカードの発行を開始しました。バハマのCBDC「デジタルサンドドル」は2020年10月より流通が開始しており、マスターカードによると世界初の実用化CBDCだとされています。

日に日にマスターカードの存在感が増していますが、今回注目すべきはデジタルサンドドルの方です。バハマには、700の小さな島々と5,000平方マイル以上の海域が存在しています。

日本とは違い、現金の移動にコストがかかりすぎるような環境の国では、デジタル通貨が大きな役割を果たします。これは、中国のような国土が広大な国でも言えるでしょう。

中国でも既にCBDCの実用化が始まっています。多くの島々や膨大な国土からなる国は、島や地方全てに現金を引き出すためのATMを設置することが困難です。だからといって、移動の度に多くの現金を持つことも現実的ではありません。

一見すると先進国に注目が集まりがちなCBDCですが、本質的な価値を発揮するのは地理的に特有の事情を抱えている国なのです。

今週は日銀からもCBDCに対する発表がありました。2021年春の実証実験開始を予定しており、およそ1年かけて機能性を確かめるとしています。日本のような地理的には小さな国の場合、中国やバハマのようなニーズは存在しません。

日銀も、現時点でCBDCの発行計画はないとしています。確かに、現時点の日本にCBDCのニーズはないと言えるでしょう。一方で、世界各国でCBDCの発行が開始された場合、日本も間違いなく対応せざるを得ないと考えています。

国内にニーズが無くても国際決済シーンでニーズが発生するからです。現状の国際決済は、SWIFTという共通規格が大部分のシェアを有しています。

異なる通貨による国際送金のシーンでも、SWIFTが中継役となることで送金ネットワークを繋ぎ決済を実現することが可能です。しかしながら、将来的にCBDCが当たり前になると、例えば全てのCBDCがイーサリアムとの互換性を持っているだけで、第三者の中継なしに送金を行うことができます。

米中が世界経済を牽引する中、中国は既にブロックチェーンを使ったCBDCを発行しています。仮に米国がブロックチェーン上にCBDCを発行することになった場合、日本は問答無用でCBDCの発行を迫られることになるでしょう。

【参照記事】Mastercard and Island Pay Launch World’s First Central Bank Digital Currency-Linked Card
【関連記事】マスターカードが世界初の実用化CBDCに対応したプリペイドカードを発行
【関連記事】日本銀行、2021年春にCBDCの実証実験第一弾を開始

まとめ、著者の考察

CBDCの例からもわかる通り、ブロックチェーンの強みは互換性がある点です。同じブロックチェーン上で稼働しているサービスであれば、DeFiのようにスマートコントラクト1つで接続することができます。

一方で、特定のプロトコルで起きた影響を市場全体が受けてしまうというデメリットも存在します。イーサリアムの価格が下落したことでDeFi市場全体で強制清算が起きてしまい、これによりDeFi銘柄の価格が下落したことでレンディングプロトコル以外のDeFiトークンも価格が下落しました。

また、急成長するDeFiのトランザクション数にイーサリアムが耐えきれず、ガス代が高騰したことでNFT市場にも影響を与えています。これは、ブロックチェーンを象徴しているかのような出来事です。

根本的な仕組みを理解しておくことで、市場全体に何が起きているのかを瞬時に把握することができるようになります。こういった知識は、単に価格が上下している場面でもその背景にある原因を分析することに繋がるのではないでしょうか。

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。