【重要ニュースまとめ(2/4~2/10)】スイスでブロックチェーンに法的効力を持たせる法律が施行。エコシステムはイーサリアムを中心に拡大

今回は、2月4日〜2月10日の暗号資産・ブロックチェーン業界の重要ニュースについて、田上 智裕 氏(@tomohiro_tagami)に解説していただきました。

目次

  1. ブロックチェーンに法的効力を持たせる法律
  2. Forbesが優れたブロックチェーン企業を選出
  3. イーサリアムに接続するパブリックチェーンが増加
  4. まとめ、著者の考察

今週(2月4日〜2月10日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、スイスで施行されたDLT Lawや優れたブロックチェーン企業を選出するForbes Blockchain 50などが話題になりました。また、イーサリアムと他のブロックチェーンを繋ぐ取り組みも加速しており、エコシステムの拡大が進んでいます。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

ブロックチェーンに法的効力を持たせる法律

ブロックチェーン先進国のスイスが、ブロックチェーンに法的効力を持たせることを定義した法律「DLT Law」を、世界に先駆けて施行しました。ブロックチェーン上に発行されたアセットであれば、スイス国内でその所有権を法的に認められることになります。

スイスからブロックチェーンのマスアダプションを急速に加速させる取り組みが出てきました。スイスは以前より、暗号資産・ブロックチェーン先進国として積極的な法整備を進めてきています。

例として、スイスのツークではビットコインによる納税が認められていることや、自社株式をトークン化した状態でIPOを実施する企業が誕生していることなどがあげられます。その他にも、Facebook主導のDiem(旧:Libra)がスイスを拠点に金融市場監督局(FinMA)よりライセンスを取得する予定です。

今回施行された「分散型台帳技術関連法(DLT Law)」では、ブロックチェーン上に発行されるデジタル証券(セキュリティトークン)を、既存の証券と同様に扱うとしています。ブロックチェーンを新たなアセットクラスの管理基盤として定義することで、新たな市場を開拓する意向が伺えます。

ブロックチェーンが我々の生活に普及するために越えなければならないハードルの1つが、ブロックチェーンをいかに信用してもらうかだと考えています。

ブロックチェーンを活用することで、これまで第三者に依存していた信用の担保を仲介者なしに行うことが可能です。しかしながら理想と現実は大きく異なっており、ブロックチェーンで管理しているから安心という概念が定着するには、ブロックチェーンへの絶大な信頼が必要となります。

一方で、現状はブロックチェーンでデータが管理されていることを確認できるのは一部の開発者に限られており、マスアダプションには到底及ばないと言えるでしょう。この課題を解決するには主に2つのアプローチがあると考えています。

1つ目は、ブロックチェーンの中身を誰もが確認できるようなツールを開発することです。こちらは既に開発が進められており、イーサリアムのトランザクションデータを可視化した「Etherscan(イーサスキャン)」などがその代表例としてあげられます。

2つ目が、ブロックチェーンに法的効力を持たせることです。法律で定義されていることであれば、テクノロジーに明るくない人でも感覚的に正否を理解することができます。

これまでは、ブロックチェーン上に発行されたアセットでもその所有権を法的に示すことはできませんでした。スイスでは、今回施行されたDLT Lawによってブロックチェーンに所有権のデータが記録されていれば、そのアセットの所有者であることを法的に主張することができるようになったのです。

例えば、株式をトークン化したものをデジタル証券としてブロックチェーンで管理することで、株式会社の議決権を第三者なしに証明することができます。また、不動産の所有権をデジタル証券として発行することで、仲介機関なしに他人へ売却することもできるようになるでしょう。

これはブロックチェーンのマスアダプションをわかりやすく進めてくれそうな動きだと言えそうです。

【関連記事】スイスが「DLT法」を施行、世界に先駆けてブロックチェーンに法的効力を持たせる

Forbesが優れたブロックチェーン企業を選出

米メディアForbesが、優れたブロックチェーン企業を選出する「Forbes Blockchain 50」を今年も発表しました。選出対象は、売上が10億ドル以上ないし評価額が10億ドル以上の企業となっています。

2019年から実施されている本企画ですが、3年連続の選出となった企業はわずか12社にとどまりました。新規での選出は全体の半数に近い21社となっており、前回選出されたGoogleやAmazon、Facebookといった企業は選出されていません。

ブロックチェーン業界で起きている変化がいかに早いものであるかが伺えるでしょう。ここでは、選出された企業を整理することで昨今の業界トレンドを考察していこうと思います。

まずは3年連続で選出された12社ですが、業界特化の事業を展開するのはCoinbaseのみとなりました。これは、ブロックチェーン業界で特化型の事業を立ち上げることの難しさを表しています。

暗号資産取引所を運営する企業は多数存在しますが、Coinbaseのようにブロックチェーンを軸に事業を組み立てられている企業はほとんどありません。

続いて、2021年のリストで目立ったのは中国企業の躍進です。Ant GroupやBaidu、Tencentといった企業を中心に計6社(12%)が選出されました。2020年は中国のブロックチェーン国家プロジェクトの開発が進んだこともあり、プロジェクトに関わっている企業が名を連ねたと結果となっています。

昨今注目を集める大企業のビットコイン市場参入の渦中にある企業も順当に選出されています。具体的には、マイクロストラテジーやフィディリティ、PayPal、Squareなどです。

業界別に分類すると、金融業界が圧倒的ではあるもののサプライチェーンや製造業の領域からも多くの企業が選出されました。いずれもブロックチェーンの効力を最大限活かすことができる業界です。

ブロックチェーンは、実際の事業に導入しようとするとコンソーシアム型にする必要があるケースが多く、それには複数の事業者に跨って事業を展開するようなものが適していると言えます。

製造業を含むサプライチェーンでは特に、一社で完結して事業を展開できることは極めて稀です。複数の事業者が共通のデータを管理する際に既存のデータベースでは不便な点が多く、ブロックチェーンを用いることで権限設定やデータ管理がスムーズになります。

2021年の展望記事でも考察しましたが、今年は様々な業界でブロックチェーンコンソーシアムが設立されることが予想されます。サプライチェーン領域では既に多数の事例が出ており、他の業界は先行事例を参考にして取り組むことができるでしょう。

【参照記事】Forbesが「Forbes Blockchain 50」を選出、昨今の業界動向が顕著となる結果に
【関連記事】2020年の暗号資産・ブロックチェーン業界をおさらい。2021年の展望も

イーサリアムに接続するパブリックチェーンが増加

新興パブリックチェーンであるAvalanche(アヴァランチェ)が、イーサリアムへの接続を実現しました。Avalanche-Ethereum Bridge(AEB)と呼ばれるシステムを通して、イーサリアム上で稼働しているDeFiプロトコルをAvalanche上でも動かすことができるようになります。

現状のイーサリアムはスケーラビリティ問題を抱えています。これは処理性能がイーサリアムの需要に追いついておらず、1秒間に処理できるトランザクションの数に制限があることを意味します。

結果的にガス代の高騰など副次的な問題を発生させてしまっているため、早急に処理性能を高めなければなりません。そのための取り組みとして、「イーサリアム2.0」や「セカンドレイヤー」の開発が進められています。

昨今は、イーサリアムの処理性能が低いことから他のパブリックチェーンが次々と誕生しています。その筆頭格であるのがAvalancheです。

Avalancheはイーサリアムとの互換性を強みとしており、特にDeFiを含む金融領域のサービスを対象に開発が進められています。イーサリアムのスケーラビリティ問題が解決するまで数年かかることを踏まえ、最近はイーサリアム以外のブロックチェーンに対応するプロトコルが急増してきました。

今回は、イーサリアム上に展開されているプロトコルをAvalanche上でも展開できるよう、ブリッジの役割を果たすプロトコルを開発したという発表です。これにより、AAVEやWBTC、その他のERC-20トークンをAvalanche上で取引することができるようになりました。

具体的には、Avalancheネットワークにこれらのトークンをロックすることで同等の別トークンがAvalanche上に発行される仕組みです。こういった仕組みをコンポーサビリティといいますが、異なるブロックチェーン間でトークンを動かす際の昨今の主流スキームとなっています。

ブロックチェーンにはインターオペラビリティ(相互互換性)がなく、例えばビットコイン(BTC)をイーサリアム上でそのまま動かすことができません。この状況では資本効率が悪いため、ブロックチェーンにインターオペラビリティを持たせるための取り組みが進められています。

具体的にはPolkadotやCosmosといったプロジェクトがあげられますが、これらはブロックチェーンそのものを繋ごうとしている仕組みと言えます。一方で、先述の通り昨今はネットワークにトークンをロックし、そのトークンを担保に別のトークンを発行するといったスキームが主流です。

2021年に入り、異なるブロックチェーンを繋ぐ場合にも複数の方法が確立されてきました。いずれも、イーサリアム上に展開されている人気プロトコルを別のブロックチェーンに呼び込みたいがための取り組みだと言えます。

イーサリアムだけが全てではありませんが、引き続きイーサリアムエコシステムが業界を牽引することが予想できるでしょう。

【参照記事】Pangolin: A Community-Driven DEX for Avalanche and Ethereum Assets

まとめ、著者の考察

今週は、スイスが非常にユニークな法律を施行したことに注目してみました。スイスは以前より暗号資産・ブロックチェーンに先進的であり、Forbes Blockchain 50にもスイス拠点の企業が複数選出されています。

一方で、こういった取り組みをそのまま日本に持って来るべきだとは言えないでしょう。スイスが推進する先進的な法整備のような取り組みを、経済学では「底辺への競争」と呼んでいます。

これは、他国に比べて法律面で優遇することで多くの企業を誘致しようという試みのことを意味しますが、底辺への競争は結果的に大した経済効果を生んではいません。国家規模が小さい国では頼らざるを得ない施策ですが、米国や日本のような大国はこれをする必要はないのです。底辺への競争と規制緩和は別物であり、日本では規制緩和が必要だと考えています。

エコシステムの動向については、イーサリアムとのブリッジを行うパブリックチェーンが増えてきたように感じます。イーサリアム自体の処理性能が高まれば何も問題ありませんが、開発状況は芳しくありません。

一方で、インターオペラビリティプロジェクトの進捗も期待されていたようには出てきていません。Polkadotはメインネットでのパラチェーン接続が実現できておらず、Cosmosは創業者のゴタゴタに足を引っ張られています。

ブロックチェーン事業を行う場合、イーサリアムにはアンテナを貼り続ける必要があるため引き続きこのトピックには注目してみることを推奨します。

【関連記事】イーサリアムとは?特徴・仕組み・購入方法

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