国内にセキュリティトークン取引所が誕生へ。Union Square Venturesが新ファンドを組成、CoinbaseのIPOで巨額リターンも

今回は、1月28日〜2月3日の暗号資産・ブロックチェーン業界の重要ニュースについて、田上 智裕 氏(@tomohiro_tagami)に解説していただきました。

目次

  1. Union Square Venturesが新ファンドを組成
  2. CoinbaseがIPO計画を正式発表
  3. SBIがセキュリティトークン取引所を開設へ
  4. まとめ、著者の考察

今週(1月28日〜2月3日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、著名ファンドUnion Square Venturesが新たなファンドを組成することを発表しました。投資先であるCoinbaseからはIPO計画が正式に発表され、ファンドとしての成功を証明しています。国内でも、デジタル証券取引所の開設が報じられるなど、セキュリティトークン市場の盛り上がりを予感させます。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

Union Square Venturesが新ファンドを組成

世界的に有名なベンチャーファンドであるUnion Square Ventures(USV)が、新たに2.5億ドルのファンドを組成する計画を発表しました。アーリーステージを対象にしたファンドとしては7つ目になるといい、既に資金調達は完了したとしています。

USVは、a16zやSequoia Capitalと並び世界的に名の知れた独立系ベンチャーファンドです。暗号資産領域にも積極的な投資を進めており、これまでのポートフォリオにはCoinbaseやPolychain Capital、Dapper Labs、Protocol Labsなどが名を連ねます。

今回の新ファンドでは、全体の30%を暗号資産・ブロックチェーン領域に投資すると明言しました。投資対象としては、トークンを直接保有するか分散型のブロックチェーン企業の株式を取得するといいます。

昨今のUSVにおける投資方針は、2018年に定義された「USV Thesis3.0」に基づきます。このポリシーの中では、大きく3つの領域が重要であることを定義しており、その1つにブロックチェーンが含まれています。

ネットワークやプラットフォーム、プロトコルを活用することで、知識や資本、福祉へアクセスすることができる社会を構築することがUSVにおける投資方針です。

今回組成したファンドでも、USV Thesis3.0と暗号資産・ブロックチェーンは完全に一致していると言及し、特に金融システムの変革に投資していくことを強調しました。注目のDeFiやオープンファイナンスに関するプロジェクトに投資が集まることが予想されます。

USVといえば、暗号資産・ブロックチェーン業界で最も有名な理論「Fat Protocol」も忘れてはなりません。

Fat Protocolとは、Web3.0の時代に、ブロックチェーンおよびトークンによってこれまで過小評価されてきたプロトコルに焦点があたり、トークン価格の高騰と共に価値が可視化されることを説明した理論です。

Web2.0の時代では、可視化されにくいHTTPやFTPといったプロトコルの開発が評価されにくく、ある種の慈善事業のように扱われてきました。こういったプロトコルは我々の生活に不可欠のものであり、世界中の機関から資金提供が行われているため民間人には馴染みが薄いのです。

その結果プロトコルが過小評価され、それらのプロトコルを利用したGAFAMのようなアプリケーションが価値や権力を独占するようになりました。

Web3.0ではこれが逆転します。イーサリアムのようなプロトコルにEtherのような独自トークンが誕生したことで、民間人でもプロトコルに投資ができるようになりました。その結果、イーサリアム上で稼働するアプリケーションよりもイーサリアム自体の価値が高まる構造が出来上がったのです。

実際、現在のブロックチェーンプロジェクトを時価総額で比較すると、プロトコルであるビットコインとイーサリアムが上位を独占し続けています。

この未来を2016年時点で概念提唱していたのがUSVであり、そのインサイトの深さが伺えるでしょう。引き続きUSVの投資する領域からは目が離せません。

【参照記事】USV 2021 Fund
【参照記事】USV Thesis 3.0
【参照記事】Fat Protocols

CoinbaseがIPO計画を正式発表

米最大手取引所Coinbaseが、ダイレクトリスティングによるIPO計画を正式に発表しました。また、IPOの前にナスダックプライベートマーケットへの未公開株の売り出しを行う方針も明らかになっています。

CoinbaseのIPOは、暗号資産・ブロックチェーン業界にとって非常に大きな意味を持ちます。なぜなら、これまでこの規模でIPOを果たした業界の企業は存在せず、ようやくウォール街に受け入れられることになるからです。いくつかの観点からCoinbaseのIPOについて考察していきましょう。

Coinbaseは2012年に創業され、これまでに約5億ドルの資金調達を行なっています。現在は「Coinbase」と「Coinbase Pro」に分類される2つの事業を行なっており、いずれも取引所ないしカストディとして説明されるものです。

2020年末時点で登録ユーザー数4,300万人、総資産額900億ドルを超える規模にあるとされ、IPO時の評価額は80億ドルに及ぶと予想されています。The Blockでは、280億ドルになるとも報じられました。

Coinbaseは、一般的な取引所と同様に手数料によるビジネスモデルを構築しています。Coinbaseの手数料は、同じく世界最大手取引所のBinanceと比べて高額に設定されています。

しかしながら、Binanceは米国でサービスを提供するためのライセンスを取得していません。万が一規制当局からの調査が入った場合のことを考慮すると、ユーザーはCoinbaseを使用する動機に繋がるといえるでしょう。

次に、今回採用したダイレクトリスティングについてです。

ダイレクトリスティングは昨今話題のIPOスキームであり、証券会社を仲介させずにIPOを行う手法です。企業がIPOを行う場合、基本的には証券会社を引受先として仲介させ、株式を買い取ってもらった後に一般投資家に販売します。この場合、高い手数料を支払わなければならず、また厳格な審査が行われるため費用も時間を大幅にかかってしまいます。

近年はSpotifyやSlackがダイレクトリスティングを採用したことで注目を集めました。Coinbaseを含めこういった企業にはIPO前から知名度があるため、証券会社を仲介させずとも一般投資家に株式を購入してもらえることが期待できます。そのため、わざわざ手数料を支払ってまで仲介させる必要がないのです。

続いて、CoinbaseのIPOが業界に与える影響について考察します。まずは、大規模IPOとしては業界企業第一号となることで、ウォール街からの信頼を得ることに繋がります。

証券取引委員会(SEC)から認可された取引所になることで、機関投資家マネーの流入も期待でき、結果的に業界全体に巨額の資金が投入されるでしょう。

なお、CoinbaseのIPOが承認された場合、現在取り扱っているいくつかのトークンが上場廃止になることが予想されています。例えば、証券性の疑いがあるXRPやテザー問題に揺れるTetherなどが該当するのではないでしょうか。

これは、投資家が安心して暗号資産への投資を行えるようになることを意味します。Coinbaseに上場しているトークンであれば厳格な審査を通過したと見做すことができるからです。

CoinbaseのIPOがいつ承認されるのかは不明確ですが、今後の暗号資産・ブロックチェーン業界にとって間違いなく一つのきっかけになることが予想されます。2021年の注目トピックとして引き続き話題が集まりそうです。

【参照記事】暗号資産取引所Coinbaseが上場計画を正式公開。話題のダイレクトリスティングを採用

SBIがセキュリティトークン取引所を開設へ

国内のセキュリティトークンおよびSTO(Security Token Offering)市場を牽引するSBIホールディングスが、三井住友フィナンシャルグループと共同で、大阪にデジタル証券用の私設取引所を開設すると発表しました。

SBIホールディングスは、2020年10月に国内で初めてSTO事業への取り組みを開始していました。日本では、2020年5月に施行された改正金融商品取引法によって、ようやくセキュリティトークンの取り扱いが認められたため、SBIの動きは非常にスピーディなものだったといえるでしょう。

今回新たに設立される私設取引所では、最初からデジタル証券(セキュリティトークン)を取り扱う方針を明らかにしています。具体的には2023年を目処にしているといい、数年かけて市場の開拓などを行なっていく構えです。

セキュリティトークンは、株式などの既存金融資産をデジタル化したものと表現することができます。特徴としては、株式と違い少額投資が可能である点です。これは、デジタル化による大幅なコストカットが影響しており、少額投資ができるようになることで資産の流動性を高めることができます。

世界的に共通する特徴として、暗号資産は若年層に受け入れられやすい点があげられます。これは、少額投資が可能である点が最大の理由です。

残念ながら日本国内では未成年による取引所の口座開設はできないところが多くなっています。しかしながら、DeFiのような本人確認(KYC)不要の投資スキームも出てきており、管理主体が存在しないことのメリットを享受することが可能です。

もちろん、AML/CFTの観点も重要になるため一概には推奨できませんが、今後の市場を作っていく世代を取り込めているという点は、暗号資産の強みになるでしょう。

【参照記事】SBIと三井住友がデジタル証券取引所を設立へ。2023年目処にセキュリティトークンも取り扱う方針

まとめ、著者の考察

新たにファンドの設立を発表したUnion Square Ventures(USV)が、早くから投資していたCoinbaseがついにIPO計画を明らかにしたということで、業界の過去と未来を考察してみました。

USVが提唱した先述の「Fat Protocol」は、暗号資産・ブロックチェーン業界で何かに取り組むにあたっては間違いなく理解しておくべき概念です。これを2016年にアウトプットできるレベルにまでインサイトを深めていた事実には驚嘆します。

USVに限らず、a16zやSequoia Capitalなどが投資する領域は必ずと言っていいほど成長してきたため、今後の動向を占う上での参考になるのではないでしょうか。

世界的には2019年にピークを迎えたセキュリティトークンも、日本では2021年にようやく市場が形成される見込みです。やはり数年遅れているのは間違いないため、情報収集の際には国外にも目を向けてみることをおすすめします。

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