【重要ニュースまとめ(1/14~1/20)】暗号資産企業初の米国法銀行が誕生。イーサリアムの大型アップデート「Berlin」が公開

今回は、1月14日〜1月20日の暗号資産・ブロックチェーン業界の重要ニュースについて、田上 智裕 氏(@tomohiro_tagami)に解説していただきました。

目次

  1. Anchorageが国法銀行としてのライセンスを取得
  2. OptimisticがVirtual Machineを公開
  3. イーサリアムの大型アップデート「Berlin」が公開
  4. まとめ、著者の考察

今週(1月14日〜1月20日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、Anchorageが暗号資産企業として米国初の国宝銀行ライセンスを取得したことが話題となりました。また、イーサリアム関連でも重要なアップデートが次々と発表され、将来的なブロックチェーンのマスアダプションを大きく期待させています。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

Anchorageが国法銀行としてのライセンスを取得

暗号資産カストディ企業大手の米Anchorageが、暗号資産関連企業としては米国で初めて連邦政府公認の国法銀行になりました。暗号資産関連企業が暗号資産以外のデジタル資産を取り扱えるようになったということで、今週最も界隈を賑わせたニュースになっています。

ここ数年、暗号資産と既存金融の距離が急速に近付き始めています。2020年9月には、取引所大手の米Krakenグループが、ワイオミング州より国法銀行としてのライセンスを取得し話題となりました。

今回Anchorageが取得したライセンスも、同様の国法銀行としての事業を行うためのものになります。このライセンスを取得したことで、KrakenやAnchorageはこれまで他社に委託していた金融事業を自社で行うことができるようになりました。

例えば、これまでは暗号資産に投資するために入金された顧客の法定通貨を自社で管理できず、外部の国法銀行へ預ける運用になっていました。これは、顧客の法定通貨を管理することができるライセンスを保有していなかったためです。

国法銀行としてのライセンスを取得したことで、顧客の法定通貨を管理することができるようになり、事業を運営する上でのコストを大幅に削減することができるようになります。

また、将来的には銀行口座で暗号資産を管理することができるようになるかもしれません。これには、法定通貨と暗号資産の両方を取り扱い可能なライセンス(国法銀行業と暗号資産交換業)が必要であり、KrakenやAnchorageだけでなく、暗号資産決済企業のBitPayやPaxosなども取得に向けて動いています。

国法銀行のライセンスは、JPモルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカも保有するものであり、その希少性が伺えるのではないでしょうか。

これまで、暗号資産を管理するには専用のウォレットが必要でした。ウォレットを操作するには秘密鍵という絶対に他人に知られてはいけない情報を厳重に管理する必要があり、初心者にとって非常に大きなハードルとなっていたのです。

仮に銀行口座で暗号資産を管理することができるようになる場合、暗号資産市場を一気に拡大させる可能性を秘めています。

なお、今回Anchorageが取得したライセンスは米国の通貨監督庁(OCC)の発行するものです。一方のKrakenグループが取得していたライセンスは、ワイオミング州の規制当局により発行されています。

米国では、50の州全てが独立した固有の法律を定めており、全米で効力を持つ法律と各州でのみ効力を持つ法律の二つが並存している状況です。すなわち、Krakenが取得したライセンスは基本的にワイオミング州でのみ有効なものになります。

これは、その他49州ではライセンスが効力を持たないことを意味します。これに対してAnchorageは、OCCよりライセンスを取得したため効力の規模が単純計算で50倍も違うことになるのです。この差は非常に大きいといえるでしょう。

今回の件は、昨今のBaaSトレンドを鑑みるとそのインパクトの大きさが実感できるかと思います。ブロックチェーン業界では、BaaSをBlockchain as a Serviceの略称として用いるのが一般的です。

これに対して既存金融やFinTech業界では、BaaSをBanking as a Serviceとして使用します。これは、現状の金融機関が担っている役割が、金融「機能」として細分化されていくことを意味する単語です。

例えば、顧客の資産管理や投資運用、通貨発行などがあげられます。今回のAnchorageの件では、既存金融の中で銀行が担っていた役割だけを取り出して、かつデジタル領域に特化することで事業展開が可能になりました。

今後も金融は細分化され民主化されていくことが予想されます。そしてその先に、分散型金融(DeFi)などの新興産業とのシナジーが生まれていくことが期待できそうです。

【参照記事】OCC Conditionally Approves Conversion of Anchorage Digital Bank | OCC
【関連記事】Anchorageが米国初の国法銀行に。暗号資産を管理可能な銀行が誕生

OptimisticがVirtual Machineを公開

イーサリアムのレイヤー2プロジェクト「Optimistic」が、人気DeFiプロトコルSynthetixへのOVM(Optimistic Virtual Machine)導入を発表しました。

今回の取り組みにより、SynthetixのネイティブトークンであるSNXがOVM上でステーキングできるようになっています。現状、OVMの導入はSynthetixのみとなっており、2021年3月までに一般公開されたテストネット上で稼働できるよう開発を進めていくと説明されました。

Optimisticは、イーサリアムのレイヤー2ソリューションである「Optimistic Rollup」などを開発するOptimismグループによって進められているプロジェクトです。元々は、Plasma Groupという名称で活動を開始しており、2020年1月にParadigmやIDEO Venturesからの資金調達を行う共にOptimismに名称変更しています。

Optimismが開発しているOptimistic Rollupは、主にイーサリアムのスケーリング性能を高めるための仕組みで、複数あるレイヤー2ソリューションの中では最も有力だといわれています。

実際、イーサリアムの共同創業者であるVitalik氏も、イーサリアム2.0が完全にローンチされるまではレイヤー2ソリューション、とりわけOptimistic Rollupの開発を進めるべきだと発言していました。

イーサリアムのレイヤー2ソリューションとしては、他にもPlasmaやSKALE、OmiseGOといったものがあります。これらは、ビットコインにおけるライトニングネットワークと同じ位置付けのものです。プロトコルとしてのレイヤー1を補完する役割を担うため、レイヤー2として総称されています。

イーサリアムにスケーリング性能の向上が求められている最たる理由は、ガス代の高騰です。イーサリアムでは、取引(トランザクション)を行うためにGas(ガス)と呼ばれる手数料が必要になります。これは、DoS攻撃や悪質なbotがかける負荷からネットワークを守るために存在するものです。

現状のイーサリアムは、1秒間に取引できる量が限られており、即時取引を行うにはガス代を高める必要があります。そのため、ガス代は自然と高騰する仕組みになっており、例えば100円分のETHを送金するために1000円分のガス代が必要になる、といった状況になっているのです。

これを解決するのが、レイヤー2ソリューションです。1秒間に取引できる量を増加させることでガス代を高めに設定する必要性を排除することができると考えられています。

なお、Optimistic Rollupがイーサリアムに実装された場合、1秒間に約10万トランザクションを捌くことができると言われています。現在は1秒間に約15トランザクションしか捌くことができないため、6000倍以上もの性能向上が期待できるのです。

イーサリアムのスケーリング性能向上のために、イーサリアム2.0というそもそものプロトコル性能を高めようとする取り組みと、レイヤー2による取り組みが並行して進められています。

後者の最有力プロジェクトがOptimisticで、今回の発表はその第一歩を踏み出したことを意味するものであり、イーサリアムエコシステムからは賛辞の声が集まっていました。

【参照記事】Mainnet Soft Launch!. A defense-in-depth approach to mainnet. | by Ethereum Optimism | Ethereum Optimism Blog | Jan, 2021
【参照記事】“Scaling Ethereum in 2020 and Beyond” – Vitalik Buterin

イーサリアムの大型アップデート「Berlin」が公開

イーサリアムの大型アップデート「Berlin(ベルリン)」の詳細が、ハードフォークの設計担当であるJames Hancock氏より公表されました。

昨今のイーサリアムでは、イーサリアム2.0と呼ばれる大型アップデートが注目を集めていますが、そのローンチは最短でも2021年末の予定です。なお、2.0がスタートしたイーサリアムでは、現行のイーサリアム(2.0に対して1.0と呼ぶ)とテスト段階のイーサリアム2.0の両方のブロックチェーンが存在しています。

イーサリアム2.0は、イーサリアム1.0に残されたアップデートを完了した上での統合が前提となっているため、1.0における今回の発表も大変重要な意味を持っています。

イーサリアム1.0における最近のアップデートとしては、2019年2月のコンスタンティノープルや同年12月のイスタンブール、2020年1月のミュアグレイシャーなどが実施されてきました。

今回発表されたのは、Berlinと呼ばれるアップデートの内容で、ガス代の再設計やEVM(Ethereum Virtual Machine)上で動作するサブルーチンをサポートするための新たなプログラムを含む、計5つのEIP(Ethereum Improvement Proposal:改善提案)によって構成されています。

元々は、2020年7月のローンチを予定していましたが、Berlinのアップデートに対応可能なクライアントソフトウェアが1つのみであったため、一時的に中断していました。今回は、既に4つのクライアントが対応可能な状態になっていると説明されています。

【参照記事】GitHub: ethereum / eth1.0-specs / berlin.md

まとめ、著者の考察

今週は、何といってもAnchorageの国法銀行ライセンスの取得が世界中で話題になっていました。日本でもこの動きは取り入れるべきとの意見が見受けられ、事の重大さが認知されるようになってきたと感じています。

最近は、FinTech業界を中心に日本でもBaaSの考え方が浸透してきているため、各銀行も長期的な役割の再定義に迫られる時代を痛感しているのではないでしょうか。

ここ数ヶ月は「2.0」の話題ばかりだったイーサリアムですが、今週は現行チェーンにおけるアップデートが複数発表されました。特に、レイヤー2としてのOptimistic Rollupには引き続きぜひ注目してみてください。

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。