【重要ニュースまとめ(12/31~1/6)】世界初の円建てステーブルコインが誕生。米国では銀行決済にステーブルコインを導入へ。

今回は、12月31日〜1月6日の暗号資産・ブロックチェーン業界の重要ニュースについて、田上 智裕 氏(@tomohiro_tagami)に解説していただきました。

目次

  1. 世界初の円建てステーブルコインが誕生
  2. インドで暗号資産税制案が提出
  3. 米国で銀行がステーブルコイン決済を開始
  4. まとめ、著者の考察

今週(12月31日〜1月6日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、GMOが世界初の円建てステーブルコインを発行したり、米国の銀行が決済システムにステーブルコインを導入できるようになったりと、ステーブルコインにわいた1週間となりました。新興国インドでは、ようやく暗号資産税制が整備されるなど将来的な市場の盛り上がりを期待させています。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

世界初の円建てステーブルコインが誕生

暗号資産取引所GMOコインなどを運営するGMOインターネットグループが、日本円建てのステーブルコイン「GYEN」を発行すると発表しました。早ければ1月中のローンチとなります。

GYENは、ニューヨーク州金融サービス局より配布されるライセンス制度の元に、まずは海外居住者を対象に発行される予定です。日本ではステーブルコインの法規制が明確化されていないため、国内で発行するにはリスクが伴うことから海外で先行開始する運びとなっています。

現状、法定通貨を担保に発行されるステーブルコインは暗号資産として定義されていません。そのため、暗号資産取引所が取り扱うことができないのです。世界中の主要取引所に続々とステーブルコインが上場する中、一定の市場規模を持つ日本では取り扱い事例がなく、異例の状況が続いているといえるでしょう。

GMOグループは、先述の通り国内で取引所事業を展開しています。日本でのステーブルコイン規制が明確化され次第、GYENを逆輸入する計画も間違いなく立てているといえそうです。

なお、法定通貨を担保に発行されるもの以外のステーブルコインであれば、法解釈次第では日本でも取り扱うことができると考えられます。例えば、Daiなどは他の暗号資産を担保にして発行されるため、現行法には抵触しないのではないかとの解釈も可能です。

今回GMOがニューヨーク州で取得したライセンスには、ドル建てでのGYENの発行権限も含まれているといいます。ステーブルコインの特徴として、国際送金における手数料の安さや為替の影響を受けづらい点があげられます。

GYENが日本でも発行できるようになった場合、新たな国際送金手段としても大きく注目を集めそうです。なお、GMOグループによると、円建てで発行されるステーブルコインとしては今回のGYENが世界初になるといいます。

現在、世界中で発行されるステーブルコインの総額は250億ドルにおよぶとされています。GYENはGMOグループによって管理される集権型のものとなり、他にもTetherやFacebookのDiem(旧Libra)などがこのタイプに該当します。

一方で、ステーブルコインにはDaiなどの分散型のタイプも存在します。集権型のステーブルコインは法定通貨建てで発行されるものが一般的であるのに対し、分散型のものは先述の通り暗号資産建てで発行されるのがほとんどです。

特定の管理者が存在しない分散型の状態で発行されることにより、同じく分散型で稼働するWeb3.0のサービス群とスマートコントラクトによってシームレスに繋ぐことができます。実際、全てがスマートコントラクトで繋がるDeFi市場では、分散型ステーブルコインのDaiが基軸通貨として流通しています。

今回発表されたGYENは、おそらくDeFi市場のようなWeb3.0を見据えたものではなく、既存金融における新たなサービスとしての事業展開を目論んでいるのでしょう。各国でCBDCの発行も急がれている中、今後どのようにシェアを獲得していくのか注目していこうと思います。

【参照記事】Press Release – December 29, 2020: Superintendent Lacewell Announces Grant of DFS Trust Charter To Enable GMO to Engage in New York’s Growing Virtual Currency Marketplace

インドで暗号資産税制案が提出

インドで暗号資産に関する税制案が提出されました。財務省の管轄下にある中央経済情報局(CEIB)が、国内でのビットコイン取引に対して18%の課税を設ける法案を公表しています。

今回の法案では、ビットコインを無形資産として定義することで、既に整備されている物品サービス税を適用する意向です。現状、インド国内では年間55億ドルものビットコイン取引が行われており、法案が可決された際に政府は約10億ドルもの追加税収を得ることになります。

もはや周知の通りインドの経済成長には目覚ましいものがありますが、その要因の一つが爆発的な人口増だといえるでしょう。暗号資産は、全世界に共通して若年層に受け入れられている側面があります。

つまり、今後のインドは暗号資産市場の中核を担う可能性を秘めているのです。現時点で、インドには暗号資産に対する明確な法規制が存在しません。規制が未整備の状態で年間55億ドルもの取引量を出していることからも、そのポテンシャルの高さが伺えるのではないでしょうか。

黎明期であれば、規制が整備されていないことはいわゆるグレーゾーンを攻めることでプラスに働いていましたが、現在は必ずしもそうではありません。なぜなら、過去の取り組みが将来的なリスクになりかねないからです。

実際、今回の発表に対してインド最大手取引所CoinDCXでCEOを務めるSumit Gupta氏は、「規制に対応するためのコストを削り、その分を今後の事業展開に充てることができる」といった前向きなコメントを公開しています。

同氏によると、2020年はインドにおける暗号資産市場が急激に盛り上がった1年になったといいます。CoinDCX内での四半期取引量は3倍に増加し、デイリーアクティブユーザーは4倍に、新規登録者数も12%増を記録したと公表しました。

【参照記事】Govt weighs imposing 18% GST on bitcoin trade

米国で銀行がステーブルコイン決済を開始

米通貨監督庁(OCC)が、国立銀行および連邦貯蓄貸付組合に対してステーブルコインの取り扱いを認可する書簡を公開しました。これにより、米国の銀行はステーブルコインを使った決済を行うことができるようになります。

米国では、暗号資産業界と銀行との歩み寄りが活発に進んでいます。今回の書簡は、2020年7月に公表されたOCCによる銀行の暗号資産管理方針の一環として位置づけられたものです。

米国を含む全世界で、銀行が通貨流通のハブとなっていることは特に異論のないことでしょう。銀行口座の開設数は、暗号資産ウォレットのそれとは比べ物になりません。つまり、ユーザー体験を重視する場合、銀行口座で暗号資産を管理することができる状態が理想的なのです。

一方の暗号資産業界でも、大手取引所Krakenが暗号資産銀行としてのライセンスを2020年9月に取得しており、これまで外部の金融機関に依頼していた業務を自社で完結して行うことができるようになりました。

OCCの通貨管理官代行も、以前Coinbaseに在籍していたBrian Brooks氏が務めるなど、既存金融における暗号資産の存在感は日に日に増しています。同氏によると、今回の書簡が公開された背景には、昨今話題のCBDCやその他のリアルタイム決済システムが関係しているといいます。

また、米国では高速処理を可能にするリアルタイム決済システムの構築が遅れており、ステーブルコインやパブリックチェーンの高い処理性能に可能性を見出しているとも言及しました。

これについては、プライバシー保護や処理速度の観点から現実的ではないとの意見も出ています。確かに、ブロックチェーンは透明性の担保や分散処理には適した仕組みですが、処理速度の向上という点では既存システムに大きく劣る部分が多いです。

恐らくは、ステーブルコインやパブリックチェーンをそのまま活用せず、独自にカスタマイズした上で提供することが予想されます。いずれにせよ、ステーブルコイン市場にとっては非常にポジティブな動きであることは間違いないでしょう。

OCCを管轄下に置く財務省は、2020年末より自己管理型ウォレットの規制強化に取り組む方針を打ち出しています。加えて、米国外で保有されている暗号資産についても、1万ドルを超える場合には当局への届け出が必要になる法案が検討されるなど、規制強化へ本格的に乗り出しています。

これについてはCoinbaseやKraken、Squareといった著名企業より続々と反対声明が出されており、今まさに議論が進められている最中です。

イノベーションの促進と規制強化を同時に進めているわけですが、米国全土が政権交代に揺れる局面でもあり、適切な引き継ぎプロセスが行われているか懸念する声も多くあがっています。

【参照記事】Interpretive Letter 1174 January 2021 OCC Chief Counsel’s Interpretation on National Bank and Federal Savings Association Auth
【参照記事】米国通貨監督庁、銀行によるステーブルコイン導入を認める書簡を公開

まとめ、著者の考察

年末より慌ただしく進められてきた米財務省による規制強化策が、年を明けてからも引き続き勢いを増して進行しています。日本の場合は、暗号資産といえば金融庁というイメージが強いですが、米国では財務省だけでなく証券取引委員会や内国歳入庁など多くの機関が積極介入をみせているのが現状です。

米国での動きは、数年後に遅れて日本に入ってくるケースが多く、日本の未来を占うという意味でも非常に参考になるのではないでしょうか。

新興市場では、インドが2021年に大きく動いてきそうな気配を漂わせています。これまでいわば無法地帯であった巨大市場が整備されることで、ますますの盛り上がりが期待できそうです。なお、インドには既にCoinbaseやBinanceといった業界の巨人たちが投資を進めています。

今週はステーブルコイン関連のニュースが多くみられましたが、今年は日本でも取り扱いのルールが明確になることを期待しましょう。

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