【重要ニュースまとめ(8/16~8/31)】国内大手企業が続々とブロックチェーン活用へ。米国では適格投資家の定義が変更、暗号資産市場への影響は?

今回は、8月後半(8月16日〜8月31日)の暗号資産・ブロックチェーン業界重要ニュースについて、田上智裕氏(@tomohiro_tagami)から寄稿していただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. Jリーグ選手をブロックチェーンで管理
  2. 米国で適格投資家の定義が拡大
  3. LIFULLとSecuritize Japanが提携
  4. LINE Blockchain Developersが開始
  5. イーサリアム2.0のテストネットに不具合
  6. まとめ・著者の考察

8月後半(8月16日〜8月31日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、JリーグやLIFULL、LINEといった著名な組織・企業によるブロックチェーン活用の本格化が話題となりました。本記事では、8月後半の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

Jリーグ選手をブロックチェーンで管理

ブロックチェーンを使ったサッカーゲームSorareが、日本のプロサッカーリーグであるJリーグとの提携を発表しました。Jリーグで活躍する選手たちが、Sorare内のカードとして登場することになります。

ブロックチェーンの盛り上がりと共に、スポーツ業界におけるブロックチェーン活用が進んでいます。今年の6月には、人気サッカーチームFCバルセロナが、独自のファントークンを発行することによる資金調達「FTO(Fan Token Offering)」を実施し話題となりました。

Sorareはイーサリアムを活用することで、実在するサッカー選手をNFT(Non-Fungible Token)として発行しているサッカーゲームです。NFTは、デジタルデータに一意性をもたらすことができるトークンであり、ゲーム内に組み込むことで「ブロックチェーンゲーム」として1つの市場を形成しています。

デジタルデータに一意性をもたらすことで、例えばゲーム内の資産に金銭的な価値を持たせることができるようになります。ブロックチェーンゲームで登場するキャラクターやアイテムは、運営によって複製や削除ができなくなるため、世界に1つだけの資産になるのです。

このNFTがサッカーゲームに採用される場合、現実世界と同様にゲーム世界でも選手が1人しか存在しなくなります。つまり、Jリーグに所属する各選手のカードは、そのゲーム内に1枚しか存在しないのです。

この経済的なインパクトは相当なものがあるといえるでしょう。極端な話、理論上は現実世界の選手と同等の価値が、ゲーム内のカードについてもおかしくないのではないでしょうか。

Jリーグにとっても、今回の提携により収益の分配や広告による副次的な効果が見込めそうです。ブロックチェーンが徐々に我々の身近な存在になってきているように感じます。

【参照記事】SorareのファンタジーフットボールゲームにJリーグ選手が参入!
【参照記事】Ethereum-based soccer game scores deal with Japan’s J.League

米国で適格投資家の定義が拡大

米国証券取引委員会(SEC)が適格投資家の定義拡大を発表しました。これまでの定義では、1億円以上の資産または年収2000万円以上が条件となっていましたが、投資知識や資格などを有していれば認められることになります。これにより、米国での個人投資の活動がより活発になるといえるでしょう。

暗号資産の領域で今回の改正の影響を受けるのは、STO(Security Token Offering)だといえそうです。ビットコインやイーサリアムなど一般的な暗号資産は、現時点で証券として見做されておらず、適格投資家として認められていない個人でも投資することができます。

一方でセキュリティトークンは明確に証券と見做されるため、資産の少ない個人投資家は投資に参加することが困難です。適格投資家の定義が拡大したことで、個人もSTOに参加できる可能性が出てきました。

そういった意味で、今回の改正は暗号資産業界にとっても大きな決定だといえるのです。

【参照記事】SEC Modernizes the Accredited Investor Definition
【参照記事】The SEC Says More People Can Invest. Here’s What Crypto Lawyers Say

LIFULLとSecuritize Japanが提携

LIFULL HOME’Sなどを運営する不動産業界大手のLIFULLが、デジタル証券プラットフォームを運営するSecuritize Japanとの提携を発表しました。両者は以前より協業を行なってきましたが、今回の提携により、不動産特定共同事業者(不特法事業者)向けのSTO(Security Token Offering)スキームの提供を本格的に開始しています。

米Securitizeは、デジタル証券をブロックチェーンで管理する仕組み「セキュリティトークン」関連のブロックチェーン企業です。セキュリティトークンは、ICOなどに使用される資金決済法上のユーティリティトークンとは異なり、日本では金融商品取引法(金商法)の枠組みにおいて規制されています。つまり、より金融的な側面が強く、取り扱い難易度が高いアセットなのです(米国では証券取引法)。

このセキュリティトークンを使った資金調達手法をSTOと呼び、日本でも本格的な盛り上がりが期待されています。先述の通り取り扱い難易度が高いため、ICOとは異なりSTOにはトークン発行体の体力が求められます。

今回LIFULLは、そんなセキュリティトークンを技術に明るくない不特法事業者でも簡単に発行できるよう、Securitizeの運営するプラットフォームを活用していく姿勢を示しました。

まず不特法事業者に特化した理由として、発行されるセキュリティトークンが金商法ではなく不動産特定共同事業法の枠組みで規制される点があげられます。不特法事業者に基づく権利は、金商法で定められている有価証券の対象にはならないのです。

つまり、不動産領域における既存規制のみを考慮すれば良いということになります。これは、規制産業における小規模事業者にとって非常に大きなアドバンテージになるといえるでしょう。他の領域に先駆けて、今後も不動産領域におけるセキュリティトークンの活用が進みそうです。

【関連記事】LIFULLとSecuritize社、不動産特定共同事業者向けのSTOスキームの提供を開始。クラウドファンディングからSTOへの機能拡張をサポート
【参照記事】LIFULLとSecuritize社が協業で不動産特定共同事業者向けのSTOスキームの提供を開始

LINE Blockchain Developersが開始

国内大手メッセージングプラットフォームを運営するLINEが、開発者向けのブロックチェーンツール「LINE Blockchain Developers」を発表しました。合わせて、デジタルアセットを管理するためのウォレット「BITMAX Wallet」の提供も開始しています。

LINEは以前より、子会社であるLVCを通して暗号資産取引所のBITMAXを運営してきました。今月6日には、独自トークン「LINK」の取り扱いをBITMAXで開始しています。2018年8月に打ち出した「LINE Token Economy」構想を実現すべく、ようやく土台が固まってきた様子です。

LINEは、取引所事業では他社に大きく遅れを取っています。国内における取引所事業は、規制の影響から差別化が難しく、後発で巻き返す機会がほとんどありません。

その結果としての判断かは不明ですが、現在はLINE Blockchainを軸にしたエンタープライズ向け製品の開発に注力している姿勢が伺えます。企業がブロックチェーンを使ってWebサービスを開発する際に、LINE Blockchainを使ってもらう狙いです。

LINE Blockchainを採用するメリットとしては、6000万を超えるLINEユーザーに対して一気にリーチできる点があげられるでしょう。鍵になるのは、今回合わせて発表したBITMAX Walletです。

LINE Blockchainを使って発行した独自トークンは、恐らくBITMAXへの上場がしやすくなると考えられます。BITMAXに上場しているトークンは、当然BITMAX Walletで取り扱いができるようになると考えられるため、LINEアカウント全体にリーチできる可能性が潜在的に存在しているのです。

一方で、既に発行しているLINEの独自トークンLINKについても、今後の動向が気になります。取引所事業ではなくエンタープライズ事業に注力する場合、LINKはLINE Blockchainを使用する際の手数料になると考えられます。イーサリアムにおけるガス代(トランザクションを実行する際に必要な手数料)と同じようなイメージです。

「BITMAX」や「BITMAX Wallet」、「LINE Blockchain」そして「LINK」。相互に影響を与え合うことで大きな事業となる可能性を秘めてはいるものの、それぞれを運営するだけでも相当な資本力が求められるため、長期的に採算が合うのか気がかりです。

【関連記事】LINE、ブロックチェーンサービス開発プラットフォームとデジタルアセット管理ウォレットの提供を開始
【参照記事】LINE Launches Digital Asset Wallet and Blockchain Development Platform

イーサリアム2.0のテストネットに不具合

8月4日よりスタートしたイーサリアム2.0のテストネット「Medalla」に不具合が発生しました。5つのクライアントの中で最大シェアを誇るPrysmの同期時刻に、約4時間の誤差が生じていたというものです。

イーサリアムは、2020年11月4日に過去最大のアップデート「イーサリアム2.0」を予定しています。このアップデートには、最低でも3ヶ月間のテストネット稼働が必要となるため、今月4日にスタートしました。

現在稼働中のテストネットには、5つのクライアントソフトが存在しています。今回不具合が発覚したPrysmは、6つのNTP(ネットワーク内でコンピュータ同士の時刻を同期させる仕組み)に接続していたものの、そのうちの1つであるCloudflareに誤差が生じてしまいました。

従って、Prysm自体の不具合ではないものの、最大シェア(約8割)を有していたためにテストネット全体に大きな障害をもたらす結果となってしまったのです。

イーサリアム2.0では、以前よりテストネットにおけるマルチクライアントの重要性を説いてきました。まさに、今回のような不具合が発生した場合に、ネットワーク全体に影響を及ばさないようにするためです。

マルチクライアント自体は達成できていたものの、ほとんどがPrysmに頼る形になってしまっていたため、このままではイーサリアム2.0をローンチすることはできません。とはいえ、テストネットの段階で得た教訓であるため引き続き修正を加え様子を見ていくことになるでしょう。

【関連記事】イーサリアム2.0の最終検証に向け、Medellaテストネットがローンチへ
【参照記事】Devs release fix for Ethereum 2.0’s crashed testnet

まとめ・著者の考察

JリーグやLIFULL、LINEといった国内でも著名な組織・企業でブロックチェーンの活用が本格化してきています。まだまだ先進的な取り組みではあるものの、事例が出ることで産業が成長するという好循環を作り上げることができます。

個人的には、個人向けのブロックチェーンがもはやイーサリアム一強であることから、エンタープライズ向け領域の競争に注目しています。日本発の製品として、LINE Blockchainがどこまで世界と戦っていけるか、ぜひ健闘してもらいたいです。

一方で、やはり米国や中国といった世界各国に対して日本は遅れを取っているのも事実です。日本の規制当局は投資家保護の観点が強すぎると感じるため、そのような考えは残しつつも、今回のSECの決定のように一部では規制を緩和してみても良いのではないでしょうか。

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