MaaS領域でブロックチェーン活用が加速。DeFiではまたもハッキング事件が発生 − 1週間の重要ニュース(4/20~4/26)

今回は、4月20日〜4月26日の暗号資産・ブロックチェーン業界をおさらいできる重要ニュースについて、田上智裕氏(@tomohiro_tagami)が解説したコラムを公開します。

目次

  1. dForceがハッキング被害に合うも資産は返却
  2. ソーシャルペイメントの動きが本格化
  3. 中国デジタル人民元「DC/EP」の試運転にスターバックスやマクドナルドが参画
  4. ソニーがMaaS領域でブロックチェーン活用を本格化
  5. ICOは復活するか、ドイツでrICOが認可

先週の暗号資産・ブロックチェーン業界は、MaaS領域でのブロックチェーン活用が話題となりました。また、DeFiや中国デジタル人民元に関しても引き続き大きなニュースが取り上げられています。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

dForceがハッキング被害に合うも資産は返却

4月中旬に、Multicoin CapitalやHuobi Capitalなどから150万ドルの資金調達を発表し話題となったdForceが、約25億円相当のハッキング被害に合いました。dForceは、DeFiレンディングプロトコルLendf.meを運営する中国のブロックチェーン企業です。

今回の事件は、イーサリアムの共通規格であるERC-777の脆弱性が原因となっています。この脆弱性は、Uniswapという分散型取引所(DEX)でも不正に使用されたことがあり、今回も同様の原因だといわれています。

巨額のハッキング事件が起きてしまったことも大きく話題となりましたが、今回の攻撃では、ハッカーが盗んだ資産を全額返却したことでさらにニュースとなりました。

ハッカーはハッキング後、盗んだ資産を法定通貨に換金するために1inch.exchangeという取引所を使用しています。1inch.exchangeのCEOを務めるSergej Kunz氏によると、ハッカーが取引所を使用した際のIPアドレスを入手することに成功したといいます。

このIPアドレスをシンガポール警察へ共有したとハッカーに告げたことにより、ハッカーは観念し早期返却に応じたと考えられています。

【参照記事】DeFiレンディングLendf.meをハックした人物が返金を開始
【参照記事】dForce attacker returns all $25M stolen funds back to the DeFi project

ソーシャルペイメントの動きが本格化

2017年に設立されたDeFiレンディングサービスのDharmaが、Twitter上で暗号資産を送金可能な「ソーシャルペイメント」の提供を開始しました。これにより、既存の金融システムを介さずとも、個人間での送金ができるようになります。

今回の新機能では、Twitterのアカウントネームを使って暗号資産を送金することができます。送金に使用する暗号資産はステーブルコインDaiです。Dharmaのユーザーは、Daiを送りたい相手をTwitter上で選択、金額を指定して送金します。

Daiは、米ドルの価格に連動するよう設計されたステーブルコインです。受け取ったDaiは取引所で法定通貨に換金することができます。

TwitterのようなSNSで暗号資産を送金できるサービスは、以前より複数存在していました。SNSを介して送金できることにより、銀行送金と比較して手数料を劇的に削減、もしくは無料送金できる点が特徴です。そのため、銀行口座を持たない個人間での送金や出稼ぎの多い国での国際送金、寄付、マイクロペイメントなどの場面で役立ちます。

これはまさに、ビットコインをはじめとする暗号資産の最大の強みであり、今後も多様に活用されることが予想されます。

【参照URL】Dharma Twitter
【参照記事】Dharma brings DAI stablecoin payments to Twitter

中国デジタル人民元「DC/EP」の試運転にスターバックスやマクドナルドが参画

中国中央銀行が中心となって開発を進めるデジタル人民元「DC/EP」の実用化が、急激に加速しています。4月23日、DC/EPの試運転を行う際の対象企業として、マクドナルドやスターバックス、サブウェイ、テンセントなどを含む計19の企業名が発表されました。試運転は、中国の雄安新区で行われます。

ブロックチェーンを国家戦略として位置付けている中国政府は、DC/EPを使った実用化プロジェクトに力を入れています。東南部の蘇州市では、公務員の受け取る交通費手当をDC/EPで支給すると発表しました。

また、国有の中国四大銀行では既に専用のウォレットアプリも開発しています。ウォレット開発には、決済アプリのアリペイを運営するアリババグループも携わっているといいます。

なお中国中央銀行は、試運転に関する業務を進めていると明かしたものの、正式にローンチしたわけではないと声明を出しています。

中国では、国家運営のブロックチェーンプラットフォーム「Blockchain-based Service Network(BSN)」のローンチも間近に迫っています。BSNそのものはブロックチェーンではなく、多様なブロックチェーンを組み合わせたプラットフォームです。暗号資産取引を禁止している中国では、コンソーシアムチェーンの開発が優先されていますが、将来的にはイーサリアムやEOSといったパブリックチェーンのBSNへの統合も予定とされています。

BSNを活用することで、中国政府はブロックチェーンを使った開発コストを大きく削減できると試算しています。民間によるブロックチェーン活用を後押しすることで、Web3.0時代の主導権を掴みにいく姿勢が感じられます。

【参照記事】【速報】中国のマクドナルドやスターバックスなどで「デジタル人民元」試用か=地元メディア
【参照記事】Starbucks, McDonald’s could trial China’s central bank digital currency – report

ソニーがMaaS領域でブロックチェーン活用を本格化

日本のソニーが、次世代移動サービス「MaaS(Mobility as a Service)」の分野におけるブロックチェーン活用を進めています。

ソニーが導入した共通データベース「ブロックチェーン・コモン・データベース(BCDB)」は、移動に関する生活の様々な場面で活用される予定です。BCDBは、オランダの水産省が開催したブロックチェーン・チェレンジプログラムを通して開発されました。ソニーもこのプログラムに参加し、今回の導入に繋げています。

BCDBでは、ユーザーの移動履歴を匿名化された状態で異なる企業に共有することができるといいます。また、ユーザーも自身で移動履歴を管理し、より効率の良い移動手段を把握することができるようになります。

MaaS領域では、日本最大手自動車メーカーのトヨタも「トヨタ・ブロックチェーン・ラボ」と呼ばれるブロックチェーン研究部門を設立し、ブロックチェーン活用を本格化させています。トヨタでは、自動車業界だけでなく金融事業への取り組みも行っていくと発表しました。

MaaSとブロックチェーンの交わりにより、一層便利な移動の実現が期待できるでしょう。

【参照記事】ソニーがブロックチェーン活用のデータベース基盤を開発──トヨタも注力、盛り上がる「MaaS+ブロックチェーン」

ICOは復活するか、ドイツでrICOが認可

ドイツの金融規制当局は、”改良版”ICOである「リバーシブルICO(rICO)」を認可しました。rICOは、最も著名なイーサリアムの共通規格であるERC-20を開発した、Fabian Vogelstelle氏によって考案されたものです。

ICOの改良版であるrICOは、2018年のイーサリアム開発者カンファレンスDevconで発表されました。暗号資産バブルを引き起こすきっかけとなったICOは、法整備が進まず詐欺が横行したことから、現在は鳴りを潜めています。

しかし、ICOは新たな資金調達の手法として非常に重要な仕組みであることから、様々な改良が加えられてきました。rICOもその一つであり、その他にはイーサリアムの共同創業者Vitalik Buterin氏の考案した「DAICO」などがあげられます。

rICOは、プロジェクト側がICOで調達した資金を一括では受け取らず、フェーズごとに分割して受け取る仕組みになっています。そうすることで、ICO直後に資金を持ち逃げしたり、当初の開発計画を反故にするといった問題を解消できると考えられています。

投資家がICOで支払った資金は、すぐにはプロジェクト側に渡らずスマートコントラクトによってロック(凍結)されます。プロジェクトが当初の開発計画に尽力していないと感じた場合、投資家は資金の一部を引き出すことができるのです。この仕組みにより、詐欺行為を抑止できるだけなく、プロジェクトの開発計画を促進することにも繋がります。

ドイツの金融規制当局は、rICOで使われるスマートコントラクトに対して法的効果があるとの見解を示しました。ドイツはこれまでにも、STOを承認するなど暗号資産を活用した資金調達の仕組みをリードしてきた国です。アメリカ、中国、日本に次ぐGDP世界第4位のドイツにおける今回の取り組みは、欧州だけでなく世界的にも大きく話題となっています。

【参照記事】独規制当局、仮想通貨の新資金調達法『リバーシブルICO(rICO)』を認可
【参照記事】The ‘reversible ICO’ is born in Germany

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。