3月後半の暗号資産・ブロックチェーン業界をおさらい

今回は、2020年3月後半の暗号資産・ブロックチェーン業界をおさらいできる重要ニュースについて解説した田上智裕氏(@tomohiro_tagami)のコラムを公開します。

目次

  1. マウントゴックスの補填準備が最終段階へ
  2. トヨタによるブロックチェーン事業が本格化
  3. BATがついに日本上陸
  4. USD CoinがDaiの担保資産に追加
  5. Coinbase WalletがDeFiサービスを統合
  6. バイナンスがCoinMarketCapを買収

3月後半の暗号資産・ブロックチェーン業界は、昨今注目を集めるDeFi(分散型金融)だけでなく、日本からも多くの話題が生まれました。本記事では、3月後半に話題となった重要トピックを解説と共におさらいしていきます。

マウントゴックスの補填準備が最終段階へ

日本を拠点とし、2014年に経営破綻した暗号資産取引所マウントゴックス(Mt.Gox)が、「Mt.Gox事件」により外部へ流出したビットコインの補填に向け、最終準備を進めていることがわかりました。なお、東京地方裁判所による再生計画の提出期限は7月1日に設定されています。

Mt.Gox事件の債権者は、返還される資金を暗号資産または法定通貨によって得ることができます。暗号資産の場合には、ビットコインに加えてハードフォークによって誕生したビットコインキャッシュも付与される予定です。今回の補填により、債権者は保有していた金額の約25%を補填額として受け取る見込みとなっています。しかしながら、2014年当時よりもビットコインの価格は数倍に上昇しているため、結果的に元の保有額よりも多くの資金を手にすることになります。

今回の補填は、3つの段階に対象を分けて行われます。1段階目は大量のビットコインを失った人、2段階目は2000ドル相当のビットコインを失った人、そして3段階目で少額を失った残りの人が対象となる予定です。

【参照記事】マウントゴックス、損失額償還で最終段階 ビットコインなど手配・一部の仮想通貨を売却へ
【参照記事】Bitcoin exchange Mt. Gox’s latest update sets out plan ahead

トヨタによるブロックチェーン事業が本格化

日本有数のグローバル企業である大手自動車メーカーのトヨタが、ブロックチェーンへの取り組みを本格化していることが明らかとなりました。

ブロックチェーン研究部門「トヨタ・ブロックチェーン・ラボ」は、Personal IDやVehicle ID基盤の構築と、ID間連携に関する実証実験に取り組んでいることを公表しています。また、車両の価値証明と所有権移転をブロックチェーンで管理する取り組みも行っています。

これらの実証実験の結果として、データの検証性や二次流通取引の際にブロックチェーンを活用できる可能性があることが示唆されました。

トヨタ・ブロックチェーン・ラボは、実証実験の結果報告に合わせてイメージ動画も公開し、「100年に一度の変革期」を迎える自動車業界でブロックチェーンが重要な要素であると紹介しています。

【参照記事】Datachainとトヨタファイナンシャルサービス、ブロックチェーンを活用した車両の「価値証明」と「所有権移転」に係る実証実験を実施

BATがついに日本上陸

日本国内で暗号資産取引所を運営するGMOコインは、暗号資産BAT(Basic Attention Token)の取り扱いを新たに開始しました。BATは、プライバシー性能の高い次世代ブラウザBraveのネイティブトークンとして発行されています。

Braveは、プログラミング言語JavaScriptの生みの親であるブレンダン・アイク氏によって開発が進められていることもあり、大きく注目を集めている話題のプロジェクトです。

既に、Twitter上で送金することができたり、アマゾンギフト券やスターバックスカードに交換できたりと、幅広い活用実績を持っています。日本では今回のGMOコインによる新規上場が初の取り扱いであり、BATおよびBraveのエコシステムが今後さらに拡大すると予想されます。

【参照記事】GMOコイン、ベーシックアテンショントークンの取り扱いを開始

USD CoinがDaiの担保資産に追加

DeFiエコシステムにおける中心的な存在となっているMakerDAOは、ステーブルコインDaiの担保資産として、USD Coinを新たに採用することを発表しました。Daiと同じステーブルコインであるUSD Coinを担保資産として採用することで、新型コロナウイルスによる昨今の不安定な市場や、不足している流動性の問題に対処することが目的です。既に担保資産として採用されているイーサリアムとBATに次ぎ3つ目となります。

USD Coinは、DaiやBATと同じくイーサリアムのERC-20規格によって発行されています。従って、互換性や流動性の観点からDaiとの相性が良く、担保資産としては適切であったといえるでしょう。しかしながら、今回の意思決定に到るまでのプロセスに、半ば強引な部分があったため、MakerDAOコミュニティからの賛同を得ることができていない状態です。

MakerDAOのコミュニティでは、意思決定の際にMKRトークン保有者によるガバナンス会議が開催されます。今回のUSD Coin追加の決定に関しても、通常通り会議が開催されています。しかし、通常は十分な期間を設けて意思決定を行うところ、今回はわずか1日程度で方針が決められました。緊急性の高い議題とはいえ、この意思決定プロセスに対してはコミュニティから大きな反発が出ています。

【参照記事】MakerDAOのUSDC担保追加の背景

Coinbase WalletがDeFiサービスを統合

米国最大手暗号資産取引所のCoinbaseは、Coinbase WalletにDeFiサービスを統合することを発表しました。

Coinbase Walletに限らず、基本的にこれまでのウォレットサービスでは、ユーザーはDeFiサービスを利用する際に一度アプリから離れる必要がありました。今回の統合により、ユーザーはアプリから離れることなくDeFiサービスを利用することができるようになります。

ウォレットによるDeFiエコシステムとの統合は、昨今急速な盛り上がりをみせています。例えば、「DeFiウォレット」として注目を集めるMonolithは、標準機能としてアプリ内でのDeFiサービスへの接続を可能にしています。また、VISAデビットカードとしての機能も有しており、暗号資産さえ持っていれば実世界で決済をすることが可能です。

このように、ウォレットによるDeFiサービスの統合が進む一方、市場の不安定な状態には注意しなければなりません。Coinbaseは今回の取り組みに際して、「現状のDeFi市場は非常に不安定であり、多くのリスクを抱えている」と注意喚起しています。

【参照ソース】新しい経済パラダイムDeFi(分散型金融)と、決済カード付きDeFi内蔵ウォレット「Monolith」

バイナンスがCoinMarketCapを買収

3月の末日に、大きなニュースがメディアを賑わせました。

暗号資産取引所最大手のバイナンスが、最大4億ドルにもおよぶ買収額で、CoinMarketCapを傘下に入れる構えであることが報じられています。CoinMarketCapは暗号資産のベンチマークサイトであり、暗号資産を時価総額で評価する業界基準を最初に作り上げた老舗サービスです。

今回の買収は4月初旬に正式発表される予定とされ、詳細の多くが未公開となっています。暗号資産メディアTheBlockの公開したデータによると、CoinMarketCapは過去半年間で2億7000万PVに到達したとのことです。

暗号資産業界ではまだまだ事例の少ない買収案件ですが、取引所の傘下に入ることで情報に歪みが発生する可能性も考えられます。CoinMarketCapは、中立の立場から長らく業界の発展に貢献してきましたが、今回の買収によりバイナンスに偏った情報が発信されるようになるかもしれません。

【参照記事】【速報】バイナンス、仮想通貨ベンチマークCoinMarketCap買収か
【参照記事】The Crypto Industry’s $400M Cash and Stock Deal – Binance to Acquire Coinmarketcap.com

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。