【2020年3月前半の重要ニュース6選】暗号資産・ブロックチェーン業界をおさらい

今回は、2020年3月前半の暗号資産・ブロックチェーン業界をおさらいできる重要ニュースについて解説した田上智裕氏(@tomohiro_tagami)のコラムを公開します。

目次

  1. 新型コロナウイルスの猛威が続く
  2. 相場の崩壊によりMakerDAOに巨額の損失
  3. 暗号資産市場の健全性が加速。警察庁が報告書を公開
  4. コインチェック事件における初の逮捕者
  5. 全世界へ金融システムを届けるCeloが始動
  6. 金融国際ネットワークBGINが発足

3月前半の暗号資産・ブロックチェーン業界は、新型コロナウイルスによる価格暴落が多くの話題をさらいました。本記事では、3月前半に話題となった重要トピックを解説と共におさらいしていきます。

新型コロナウイルスの猛威が続く

2月に続き、3月前半も新型コロナウイルスが猛威を振るっています。中でも、3月11日に世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染症のパンデミックを宣言したことにより、多くの暗号資産価格が暴落しました。ビットコインは、一時50万円前半台まで大きく下落しています。

3月12日には、ニューヨーク株式市場で今月2度目となるサーキットブレーカーが発動しました。これに引きずられ、日経平均株価だけでなく暗号資産市場も下落した形です。

今回の大暴落は、ビットコインがデジタルゴールドとしての価値を有していなかったことを裏付ける要素となりました。要するに、これまでの価格は投機対象としての需給により形成されていたということです。

これに関して、年金口座に暗号資産投資を提供するiTrustCapitalが3月11日にアンケート調査を実施しています。アンケート結果によると、現金を安全資産と回答した人は28%、金(ゴールド)を安全資産と回答した人は32%となっています。一方のビットコインは、残念ながら7%という結果に終わりました。

【参照元】CoinDesk “Cash Is the New Safe Haven as Crypto, Gold Continue to Tank – iTrustCapitalによるアンケート結果”より

暗号資産マイニング市場でも、負の連鎖が起きています。価格が暴落したことでマイニングの損益分岐点を下回り、マイナーが軒並みマシンを停止してしまったのです。これにより、暗号資産ネットワークの崩壊が懸念され、価格はさらに下落しました。

以下に、ビットコインマイニングの損益分岐点に関する各アナリストデータを掲載します。

  • カペリオール・インベストメンツCharles Edwards氏:1BTC=8,000ドル
  • 中国拠点のマイニングプールf2pool:Antminer S9の場合1BTC=7,518ドル
  • 暗号資産リサーチ機関TradeBlock:Antminer s17+の場合1BTC=6,851ドル、ベネズエラやウズベキスタンといった電気代が安価な国の場合1BTC=4,000ドル

価格下落のスパイラルから抜け出しマイニングの損益分岐点を超えることが、暗号資産における当面の目標となりそうです。

【参照記事】株の歴史的急落と相関強まる仮想通貨ビットコイン市場、意識されるマイナー損益分岐は
【参照記事】Cash Is the New Safe Haven as Crypto, Gold Continue to Tank

相場の崩壊によりMakerDAOに巨額の損失

bZxのアービトラージ事件に続き、DeFiに関する大きな出来事が3月12日に発生しました。新型コロナウイルスの影響からイーサリアム(ETH)の価格が暴落し、ステーブルコインDaiの発行および管理を行うMakerDAOが、約400万ドルの損失を負う事態になっています。

【関連記事】bZx事件から見るDeFiの攻撃リスクとは?

MakerDAOには、Keeper(キーパー)と呼ばれるDaiの価格を安定させるためのシステムが存在します。このシステムは、Daiを発行するために必要な担保資産(ETHやBAT)の清算を、オークション形式で自動的に実施するためのものです。

今回の暴落により、ETHの市場取引が瞬間的に増発しました。そのため、イーサリアムのトランザクションが詰まり、その影響を受けたKeeperによる自動清算が、Daiの価格を安定させるための清算を行うことができなかったのです。その結果、ETHの価格をリアルタイムでDaiの価格に反映させることができず、ETHを無料で競り落とすことが可能な状況に陥ってしまいました。

この無料競り落としで発生した損失は、約400万ドルにのぼるといいます。MakerDAOは、この損失をカバーするためにMKRトークンを新規発行および販売することで資金調達を行う方針です。

まだまだ黎明期のブロックチェーン産業において、bZx事件や今回のMakerDAOの件は、一種の成長痛とも捉えられるでしょう。

【参照記事】ビットコイン大暴落で数億ドルの「マージンコール」発生、大手仮想通貨ローン企業で
【参照記事】Black Thursday Response Thread

暗号資産市場の健全性が加速。警察庁が報告書を公開

令和元年の暗号資産における疑わしい取引の届出件数が、昨年と比較して減少していたことが発表されました。警察庁の公開した「犯罪収益移転防止に関する年次報告書(令和元年)」によると、暗号資産に限らない全体の受理件数は440,492件であり、昨年比5.5%増となっています。暗号資産に関する件数は5,996件となり、昨年比は15.6%減だということです。

現在、暗号資産に関する取引の懐疑性は取引所が判断することになっています。なお、金融庁は取引所向けの判断基準として参考事例を公開しており、各取引所はこれに基づいて報告を行います。

【参照記事】犯罪収益移転防止に関する年次報告書(令和元年)

コインチェック事件における初の逮捕者

2018年1月に発生した国内大手取引所コインチェックでのネム(XEM)流出事件において、初の逮捕者が出ました。警視庁サイバー犯罪対策課は3月11日、XEMを他の暗号資産に不正交換したとして、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益収受)容疑で日本人を逮捕しています。

逮捕者は2名おり、いずれも違法に流出したXEMと知りながら、流出に関与した人物の呼びかけに応じて交換した疑いがかけられています。

【参照記事】流出「NEM」を不正交換容疑 警視庁、男2人逮捕

全世界へ金融システムを届けるCeloが始動

シリコンバレー発のCeloが、プロジェクト初期加盟メンバーを発表しました。Celoは、2019年4月にa16zやPolychain Capitalから総額3,000万ドルを調達している注目のプロジェクトです。昨今話題となっているFacebook主導のLibraと同様、既存の金融システムを享受できていない世界中の人々に、新たな金融システムを届けることを目指しています。

3月12日に発表されたCeloの「Alliance for Prosperity(A4P)」と呼ばれる同盟には、a16zやPolychain Capital、Coinbase Ventures、Blockchain.com、ハードウェアウォレットのLedgerをはじめとする60以上の企業・団体が集まりました。

Celoは、金融包括をプロジェクトのミッションとし、送金や人道支援、マイクロレンディングなどの事例を探求するとしています。またモバイルファーストを軸に置き、世界中のスマートフォンユーザーに透明性の高い金融システムを届けることを目指します。

【参照記事】金融包摂を目指した新たな仮想通貨構想 「セロ」a16z、CoinbaseVCなど50社を超える参加
【参照記事】Celo’s Alliance for Prosperity is like Libra without Facebook

金融国際ネットワークBGINが発足

3月10日に、ブロックチェーン基盤の金融ガバナンスの構築に向けた国際ネットワーク「ブロックチェーン・ガバナンス・イニシアチブ・ネットワーク」が設立されました。同団体は「Blockchain Governance Initiative Network」の頭文字を取って「BGIN(ビギン)」と呼ばれます。

BGINは、ブロックチェーン基盤の金融ガバナンスを構築することを目的とし、オープンかつグローバルなコミュニケーションの場を形成するために活動するといいます。また、技術文書とソースコードを通じたブロックチェーンに関する知識の蓄積と、各種ステークホルダーにおける共通理解の醸成を目指します。

金融庁と日本経済新聞社の共催イベント「Blockchain Global Governance Conference -BG2C- FIN/SUM」で、発起人の一人である松尾真一郎氏は、インターネット技術の標準化を行う団体組織IETF(Internet Engineering Task Force)を参考にBGINを作ったと説明しました。

なお発起人には、先述の米ジョージタウン大学研究教授の松尾真一郎氏の他に、金融庁フィンテック室長の三輪純平氏、OpenID Foundation理事長の崎村夏彦氏などをはじめとする計23人の国際色豊かな個人が名を連ねています。

【参照記事】ブロックチェーンの標準化に向けた国際ネットワークが設立【BGIN】
【参照記事】ブロックチェーン・ガバナンス団体”BGIN”が発足

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。