4月前半の暗号資産・ブロックチェーン業界をおさらい

今回は、2020年4月前半の暗号資産・ブロックチェーン業界をおさらいできる重要ニュースについて解説した田上智裕氏(@tomohiro_tagami)のコラムを公開します。

目次

  1. 改正資金決済法の施行日が決定。パブリックコメントも公開
  2. 暗号資産取引所バイナンスがCoinMarketCapを買収
  3. ニトリやトヨタ、鎌倉市がブロックチェーン事業へ参入
  4. ビットコインキャッシュに初の半減期が到来
  5. a16zが2号ファンドを組成

4月前半の暗号資産・ブロックチェーン業界は、金融庁によるパブリックコメントの公開やバイナンスによるCoinMarketCapの買収、ビットコインキャッシュの半減期など重要な出来事が多く発生しました。本記事では、4月前半に話題となった重要トピックを解説と共におさらいしていきます。

改正資金決済法の施行日が決定。パブリックコメントも公開

通称「仮想通貨法」と呼ばれていた改正資金決済法が、2020年5月1日に新たなる改正を迎えます。日本は、2017年4月に初めて暗号資産に関する法律が施行されており、暗号資産に関する法規制を世界で初めて整備したことで知られています。

この改正資金決済法は、元々存在していた資金決済法の中に暗号資産に関する項目を追加する形で施行されました。そのため、通称「仮想通貨法」とも呼ばれているのです。この法案の更なる改正案が2019年5月に可決されており、2020年5月1日に施行されることになりました。

これに伴い金融庁は4月3日、「令和元年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等」と題したパブリックコメントの詳細を公開しています。これは、新たな法規制が整備される際に実施されるものであり、法案に対する民間からの意見に回答していくための場として設けられています。

黎明期である暗号資産業界における法案に対しては、毎回非常に多くの意見が集まる傾向にあります。今回の改正資金決済法に関しても、約3年ぶりの改正ともあり、172の個人および団体より延べ398件の意見が提出されたと公表されています。

注目のテーマとしては、顧客の資産を管理する際に暗号資産交換業の免許を必要とするのか、取引所におけるレバレッジ取引の倍率は2倍が適正値なのか、といった項目があげられます。消費者保護とイノベーションの促進はトレードオフな部分が多く、今後も官民によるバランスの取れた議論が必要になるといえるでしょう。

【参照記事】令和元年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等に対するパブリックコメントの結果等について
【参照記事】仮想通貨交換業者に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(内閣府三五)
【参照記事】コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方
【参照記事】速報 金融庁、仮想通貨規制に係るパブコメ回答を公開 レバレッジ規制等の重要内容まとめ

暗号資産取引所バイナンスがCoinMarketCapを買収

暗号資産取引所最大手のバイナンスは4月3日、暗号資産ベンチマークサイトのCoinMarketCap(CMC)を買収すると正式に発表しました。買収額は最大4億ドルにおよぶといわれています。なお今回の買収は、現金とBNB(バイナンスの発行する暗号資産)によるものと報じられています。

CMCは、暗号資産を時価総額で評価する業界基準を、最初に作り上げた老舗サイトです。暗号資産メディアTheBlockの公開したデータによると、CMCは過去半年間で2億7,000万ものPVを記録しているといいます。

CMCは今回の買収に伴い、従来の広告モデルからサブスクリプションモデルへの転換を目指すと発表しています。先述したTheBlockをはじめ、多くの暗号資産サイトがサブスクリプションモデルを採用しており、広告モデルからの脱却が顕著な業界であるといえるでしょう。

なおバイナンスは、2019年にDAppsデータ分析サイトのDappReviewを買収しています。今回のCMCと合わせて、データ収集および分析サイトへの強い関心が伺えます。分析サイトが取引所の傘下に入ることにより、以前とは異なる操作されたデータが公表される可能性が、暗号資産界隈で危惧されています。

特にCMCは、非常に多くの投資家が参照していたサイトであるため、今後は複数リソースをみていく必要があるかもしれません。

【関連記事】大手取引所バイナンス、仮想通貨相場サイトCoinMarketCapに4億ドルの買収提案か
【参照記事】バイナンス、大手仮想通貨ベンチマークCoinMarketCap買収を公式発表
【参照記事】Confirmed: Binance has officially acquired CoinMarketCap

ニトリやトヨタ、鎌倉市がブロックチェーン事業へ参入

インテリア小売業国内大手のニトリグループが、ブロックチェーン事業へ本格的に参入し始めています。子会社のホームロジスティクスが主導となり、製造業や物流業、小売業へのブロックチェーン活用を推進していると発表されました。今秋にも新システムを稼働させる予定だといいます。

ニトリでは、主に次の3つの目的を果たすためにブロックチェーンを活用する予定です。1つ目は伝票などの書類を撤廃するため。2つ目は社外と連携して共通のデータベースを構築するため。3つ目は積載率を向上させるためだといいます。

ニトリは今後、中小の運送会社を束ねることで、家具の配送だけでなく様々なサービス業にも参入していくと発表しています。そこで使用されるシステムの基盤を担うのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンへの取り組みは、トヨタや鎌倉市でも実施されています。

3月後半のまとめでも紹介しましたが、トヨタは「トヨタ・ブロックチェーン・ラボ」と呼ばれるブロックチェーン研究部門を設立しています。自動車業界だけでなく、金融子会社のトヨタファイナンシャルサービスを通して金融事業への取り組みも行っていくと発表しました。

また鎌倉市では、市役所内で流通するデジタルコインを、ブロックチェーンを使って発行および管理する実証実験が行われています。この取り組みは、コミュニケーションの促進を目的に実施されたと発表されています。

【参照記事】デジタル物流、ニトリ変身 秋にもブロックチェーン稼働
【参照記事】トヨタが「金融ブロックチェーン」に本腰、鍵を握る2つの技術
【関連記事】鎌倉市役所でブロックチェーンを用いたデジタルコインの実証実験が実施

ビットコインキャッシュに初の半減期が到来

ビットコインのハードフォークにより誕生したビットコインキャッシュが4月8日、初の半減期を迎えました。これに伴い、マイニング報酬が6.25BCHへと半減しています。

ビットコインとビットコインキャッシュの半減期は、21万ブロックごとに訪れます。1ブロックは約10分に1度形成されるため、21万ブロックに到達するのは約4年ごとという計算になります。そのため、半減期は非常に大きなイベントとして迎えられるのです。

そもそも半減期とは、暗号資産のインフレを防止するための仕組みです。マイニングによって新規発行される暗号資産の量を、文字通り半減させます。従って、理論上は半減期後に暗号資産の価格が上昇することになるのです。

しかし、半減期によって新規発行される暗号資産の量が半減するため、マイナーへのマイニング報酬が短期的には半分になります。これにより、半減期後には一時的にハッシュレートが下がる、つまりマイナーの数が減少する傾向が強くなっています。ハッシュレートはマイニングの実施速度のことであり、下がることにより暗号資産の取引が成立しにくくなってしまいます。実際、今回のビットコインキャッシュの半減期後も、通常は10分に1度行われるマイニングが、2時間に1度しか行われていません。

半減期は、約4年に1度の大イベントということもあり様々な変化が発生しやすくなるため、今後も多くの注目を集めるでしょう。

【参照記事】ビットコインキャッシュ「半減期」を迎え、マイナーの採算性は大幅下落
【参照記事】Bitcoin Cash halves for the first time

a16zが2号ファンドを組成

シリコンバレーに拠点を置く世界最大手のベンチャーキャピタルAndreessen Horowitz(a16z)が、新たに暗号資産・ブロックチェーン特化のファンドを組成する予定だと報じられました。

a16zは、2018年に「a16z crypto」と呼ばれる1号ファンドを、3.5億ドルの規模で立ち上げています。今回の2号ファンドでは、4.5億ドルの調達を目指しており4月中にクローズされる予定だといいます。

1号ファンドのポートフォリオには、CoinbaseやMakerDAO、Dapper、DFINITY、dY/dXといった注目のプロジェクトが名を連ねます。また、Polychain Capitalに対してファンドオブファンズの形で資金提供も行っており、暗号資産・ブロックチェーン業界に対しての注力度合いが伺えるでしょう。

a16zは、「a16z Crypto Startup School」と称したインキュベーション事業も展開しています。無料で参加可能かつ出資を強要しない点が特徴であり、錚々たるメンバーがメンターとして参画し話題となりました。

今回の2号ファンドにより、累計で7億ドルもの資金を暗号資産・ブロックチェーン業界のプロジェクトに投資することになります。新型コロナウイルスによる昨今の状況下でも、新規投資を継続して行う構えが伺えます。

【参照記事】大手VC「a16z」、4.5億ドル規模の仮想通貨関連ファンドを新たに組成へ=FT
【参照記事】Andreessen Horowitz Looks to Raise $450M For a Second Crypto Fund

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。