2020年の暗号資産・ブロックチェーン業界をおさらい。2021年の展望も

今回は、2020年の暗号資産・ブロックチェーン業界の主要トピックと2021年の展望について、田上智裕氏(@tomohiro_tagami)から寄稿していただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. 2020年振り返り(グローバル編)
    新型コロナウイルスの影響
    米中冷戦はCBDCでも勃発
    イーサリアムとビットコイン
  2. 2020年振り返り(日本編)
    DeFi市場の盛り上がり
    日本でもCBDCが注目を集める
    セキュリティトークン市場が立ち上がる
  3. 2021年予測(グローバル編)
    ブロック経済とCBDC
    トラベルルールの後ろ倒し
    2021年のビットコイン価格
  4. 2021年予測(日本編)
    国内取引所の再編
    コンソーシアムの設立
  5. まとめ

東京五輪で賑わう年になるはずだった2020年は、蓋を開けてみると新型コロナウイルスによって誰も予期せぬ1年となりました。そんな2020年ですが、DeFiやCBDC、そしてビットコイン価格の高騰など、今年も話題に事欠かぬ1年だったのではないでしょうか。

本記事では、2020年に起きた主要トピックを振り返ると共に、2021年の展望についても触れていきたいと思います。昨年の振り返り記事にも言及しながら進めますので、合わせてご覧ください。

2020年振り返り(グローバル編)

新型コロナウイルスの影響

まずは何といっても新型コロナウイルス(COVID-19)です。暗号資産・ブロックチェーン業界も、2020年は新型コロナウイルスの影響を大きく受けました。

具体的には、2月に金(ゴールド)の価格が高騰したのに対してビットコインの価格が暴落、デジタルゴールドとしての機能をまだまだ果たせていない結果となりました。その後、3月には一時50万円台にまで下落しています。

本記事執筆時点(11月末)では、ビットコインは3年ぶりに高値を更新し200万円に迫る勢いです。背景には、新型コロナウイルスに対する各国の経済政策によって刷られた紙幣が行き場を失い、暗号資産市場に流れ込んできている点が考えられます。

新型コロナウイルスによる暴落で始まった1年が、結果的にその対策によって高騰を迎え1年を締め括ろうとしています。

【参照記事】【2020年3月前半の重要ニュース6選】暗号資産・ブロックチェーン業界をおさらい

米中冷戦はCBDCでも勃発

2019年に最も話題を集めたFacebookのLibraは、2020年には全くといっていいほど動きがありませんでした。代わりに、Libraによって口火が切られた中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)の覇権争いが、2020年を代表するトピックとなっています。

中でも中国の取り組みが2019年に引き続き他国を圧倒しており、国家プロジェクトとして既に実用化フェーズに入ってきました。これに対抗するように、米国でもデジタルドルの研究が進んでいますが、未だ発行を決定するには至っていません。

11月に開催された米国大統領選挙の結果、トランプ政権がバイデン政権に代わり、CBDCに対する取り組みにも何かしらの変化が起きそうです。

【参照記事】機関投資家向けの暗号資産市場が活性化。サムスンとウィンクルボス兄弟がタッグを組む − 1週間の重要ニュース(5/25~5/31)

イーサリアムとビットコイン

2020年最大の出来事といっても過言ではないのが、イーサリアム2.0のメインネットローンチです。11月にデポジットコントラクトがリリースされ、12月1日には待望のジェネシスブロックが稼働しました。

ジェネシスブロックは、Beacon Chainと呼ばれるイーサリアム2.0のブロックチェーンを構成する最初のブロックを思います。2020年は後述するDeFiの盛り上がりが顕著な1年となり、結果的にイーサリアムのガス代高騰問題を再浮上させました。

そんなガス代の高騰を含むスケーラビリティ問題を解消すべく、イーサリアム2.0の開発が進んでいるのです。

2019年の振り返り記事でも触れたビットコインの半減期ですが、予定通り通過し特に大きな問題なく価格も右肩上がりを続けています。

暗号資産・ブロックチェーンを代表するビットコインとイーサリアムですが、2020年は単純な価格変動だけでなく技術的なトピックが多く話題となり、産業の確実な成長を感じさせました。

【参照記事】ビットコイン半減期後の注意事項をおさらい。Redditが投稿者に独自トークンの付与を開始 − 1週間の重要ニュース(5/11~5/17)

2020年振り返り(日本編)

DeFi市場の盛り上がり

日本でももはや知らない人はいないであろうDeFiですが、2019年の振り返り記事では2019を元年として紹介していました。2020年に入るとバブルを感じさせる爆発的な市場の成長をみせたため、温度感としては正しかったのではないでしょうか。

元年であった2019年は、ステーブルコインや分散型取引所(DEX)、レンディングの領域でサービスが数多く誕生しました。2020年は、それらに投機的な需要が入り「Yield Finance」や「Liquidity Mining」といった概念が誕生しています。

発端となったガバナンストークンの発想自体は、2019年時点で既にMakerDAOのMKRが稼働していたため特に新しいものではなく、やはりタイミングは重要であることを感じさせました。DeFi市場には巨額のファンドマネーも流入し、暗号資産市場全体を後押しする要因にもなったといえるでしょう。

一方で、2020年にステーブルコインが上場すると予測していましたが、これは残念ながら実現しませんでした。現行法では、法定通貨建てのステーブルコインは暗号資産として認められておらず、上場候補はDaiの一択となっていましたが、仕組みの複雑さから当局への説明が困難であったことが影響してそうです。

【参照記事】暗号資産市場の新たなトレンド、ガバナンストークンやファントークンの発行が加熱 − 6月後半の重要ニュース(6/15~6/30)

日本でもCBDCが注目を集める

日本の2020年は、CBDC元年だったといえるのではないでしょうか。2019年の振り返り記事で既にCBDCを主要トピックにあげていたことを考えると、やはり世界からは遅れを取っていることがわかります。

そんな日本ですが、現時点でCBDCの発行計画はないと明言しているものの、CBDCに関する技術レポートを公開するなど積極的な取り組みを行ってきました。

FIN/SUMやBGINなどのように、金融庁や日本銀行を交えたオンラインイベントも数多く開催され、CBDCには国家政策としての度合いが感じられます。

【参照記事】【2020年2月の重要ニュース5選】暗号資産・ブロックチェーン業界をまとめておさらい

セキュリティトークン市場が立ち上がる

2020年5月は、日本国内で暗号資産に関する法律が施行された2回目のタイミングでした。前回に続き資金決済法が改正され、仮想通貨が「暗号資産」として名称統一されています。

合わせて金融商品取引法も改正され、国内でもセキュリティトークンの取り扱いがようやくスタートしました。国内市場をリードしているのはSBIグループです。10月に日本初となるSTOを実施しています。

SBIグループの他にも、不動産領域でLIFULLがセキュリティトークン市場への積極参入をみせました。セキュリティトークンを事業として行うには発行体の体力が求められるため、SBIやLIFULLのようにある程度の企業規模に限られるのです。

大企業という括りでは、トヨタやソニー、ニトリといった面々もブロックチェーン活用を大きく進めた1年でした。エンタープライズ領域のブロックチェーン活用であれば、特に大きな規制は設けられていないため、2021年はより一層の参入が期待できるでしょう。

【参照記事】3年ぶりの新たな法改正が施行。BitMEXは日本市場から撤退 − 1週間の重要ニュース(4/27~5/3)

2021年予測(グローバル編)

ブロック経済とCBDC

2020年に続き、2021年もCBDCが話題の中心にくることは間違いありません。中国では既に実用化が始まっており、より本格的に消費活動へCBDCが介在してくることが予想されます。

11月の米大統領選に勝利したバイデン氏は、金融政策責任者としてCFTC(米先物取引委員会)の元会長であるゲンスラー氏を起用する方針を明らかにしています。ゲンスラー氏は、暗号資産・ブロックチェーン推進派として知られ、米国におけるCBDCの取り組みを加速させそうです。

今後、世界はグローバル化ではなく米中によるブロック化へと進みます。それぞれの経済圏における基軸通貨を発行するにあたり、中国がCBDCを発行するのであれば米国もそれに対抗する姿勢を取るのではないでしょうか。

トラベルルールの後ろ倒し

2020年の実行が予定されていたトラベルルールですが、対応難易度の高さから最後まで実行されずに終わることが予想されます。

トラベルルールは、各国の暗号資産関連事業者(VASP:Virtual Asset Service Provider)を対象に、FATF(金融活動作業部会)が整備する規制の一つです。暗号資産の送金時に、送り手と受け取り手の個人情報をそれぞれ記録しなければならず、暗号資産の特徴であるプライバシー性が失われる懸念が出たものでした。

一方で、このトラベルルールを実施するためには相応のオペレーションを組む必要があり、莫大なコストが発生することからなかなか対応が進んでいません。

2021年にずれ込む形となったトラベルルールですが、FATFの取り決めは絶対的な効力を持っているため、近い将来必ず実行されるものとなっています。

2021年のビットコイン価格

暗号資産の価格変動に関しては全くといっていいほど専門ではありませんが、ファンダメンタルズの観点から少しだけ触れておきます。

先述の通り、本記事執筆時点(11月末)でビットコインは3年ぶりの高値を更新し200万円に迫る勢いです。過去の高騰とは異なり、今回および今後のビットコイン価格高騰には以下の要因が影響してくると考えています。

  1. 新型新型コロナウイルスに対する経済政策
  2. 半減期相場
  3. DeFi市場での利用
  4. 機関投資家マネーの流入

1点目は先述の通り、過剰なマネーサプライが暗号資産市場への資金流入を生み出していると考えられます。2点目は、5月に無事通過した半減期によって新規発行数が半減した結果、市場全体に流通するビットコインの価値が向上する原理が働いています。

3つ目は、DeFi市場との関連性です。2019年の予測記事でも触れたインターオペラビリティ問題を解消すべく、ビットコインを担保資産としたERC-20トークン「WBTC」が台頭しました。

WBTCの活用が進んだことでビットコインがDeFi市場に流れ込み、これが結果的にビットコインの需要増に再帰したと考えられます。つまり、イーサリアムではなくビットコインでもDeFiを利用できる環境が整ったため、DeFiに投資するためにビットコインを購入するユーザーが増えたのです。

4つ目は、暗号資産市場以外からの巨額資金の流入です。機関投資家向けに投資信託を販売するGrayscale(グレースケール)やFidelity(フィデリティ)が、2020年に続き大量にビットコインを購入することが予想されます。

これにより、底の固い市場が形成されつつあるといえるのではないでしょうか。これまでは投機的な需要による価格変動が中心となっていましたが、今後は上記のようなファンダメンタルズが市場を牽引しそうです。

2021年予測(日本編)

国内取引所の再編

2021年は、国内の暗号資産取引所の再編成が進みそうです。近年の法改正により暗号資産取引業で利益をあげることが難しくなり、黒字経営ができるのは一部の取引所に限られるようになりました。

また、先述のトラベルルールへの対応コストが尋常ではないため、小規模取引所は事業の継続を断念せざるを得ない状況が訪れつつあります。

2020年にも、Zホールディングス傘下にあったTAOTAOがSBIグループに買収されるなど、既に業界の再編成は進んでいます。

コンソーシアムの設立

エンタープライズブロックチェーンの市場が徐々に形成されつつある中で、2021年はさらなる大企業の参入が予想されます。

ブロックチェーンは一社で独占して管理するものではないということに気付き始めている企業が多く、今後はコンソーシアムの設立が相次ぐでしょう。もちろんエンタープライズ市場もイーサリアムがリードすることが予想され、イーサリアム2.0の動向にも注目が集まりそうです。

合わせて、海外では益々盛り上がりをみせているセキュリティトークンの取り組みも加速するのではないでしょうか。

まとめ

2020年は、日本でもCBDCへの取り組みが少しずつみられた1年でした。一方で、DeFiやセキュリティトークンといった純粋なブロックチェーンの文脈では、やはり海外に遅れを取ってしまっています。

2021年注目の国内トピックとしては、引き続きDeFiやCBDCが中心に来るものの、個人的には業界の再編成が気になっています。現状の国内取引所市場は、かかるコストに対してリターンが圧倒的に少なく、サービスを提供するほど将来に直結しない損失が増える一方です。

これは規制緩和でいくらでも解消できる問題だと考えているため、来年も多方面からの政策提言が求められる1年になりそうです。

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。