3年ぶりの新たな法改正が施行。BitMEXは日本市場から撤退 − 1週間の重要ニュース(4/27~5/3)

今回は、4月27日〜5月3日の暗号資産・ブロックチェーン業界について、田上智裕氏(@tomohiro_tagami)が解説したコラムを公開します。

目次

  1. 改正資金決済法と改正金融商品取引法が施行
  2. 暗号資産取引所BitMEXが日本市場から撤退
  3. a16zの巨額2号ファンドが組成
  4. NASDAQがR3と提携
  5. TelegramはICO資金を返還

今週(4月27日〜5月3日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、国内で3年ぶりに施行された新たな法規制に話題が集まりました。一方の海外では、a16zが5.15億ドルもの巨額2号ファンドを組成し、市場の成熟化が進んでいます。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

改正資金決済法と改正金融商品取引法が施行

5月1日、改正資金決済法と改正金融商品取引法が施行されました。2017年4月1日に、初めて暗号資産に関する法規制が施行されて以来2度目の法改正となります。

今回の施行により、仮想通貨の呼称が正式に「暗号資産」に統一されます。また、昨今注目を集めるセキュリティトークンについての整備も進みました。前者は改正資金決済法にて、後者は改正金融商品取引法にてそれぞれ明確化されています。少し具体的にみていきましょう。

改正資金決済法では、暗号資産の呼称変更に加え、いわゆる「カストディ規制」が定められています。これまでは、暗号資産と法定通貨の交換機能を顧客に提供しない限り、交換業の免許は不要でした。しかし今回より、顧客の暗号資産を預かるウォレットサービスを提供する場合にも、交換業の免許が必要になります。

一方の改正金融商品取引法では、「電子記録移転権利」が新たに創設されました。これは、セキュリティトークンを規制するための枠組みであり、今回の法改正で最も注目が集まった項目だといえます。

そもそもセキュリティトークンとは、ブロックチェーンを使って発行されるトークン(暗号資産)のうち、証券性を持ったものを意味します。そのため証券のデジタル化ともいわれており、このトークンを使って実施される資金調達手法をSTO(Security Token Offering)と呼んでいます。規制が明確化されたことで、今後の市場発展がより一層期待できるでしょう。

改正金融商品取引法では、暗号資産のデリバディブ取引についても規制対象としています。今後、顧客に対して暗号資産のデリバディブ取引を提供する場合、金融商品取引業への登録が必要になります。

なお、今回の施行をうけて金融庁は、日本STO協会と日本暗号資産取引業協会(JVCEA)の2団体を「認定金融商品取引業協会」として認定しました。日本STO協会には、SBI証券や楽天証券、マネックス証券、大和証券、野村證券、みずほ証券などが加盟しています。

一方のJVCEAは、資金決済法に基づく「認定資金決済事業者協会」として金融庁から既に認定されていた団体です。今回、金融商品取引法に基づく団体としても新たに追加認定された形になります。

【参照記事】仮想通貨は暗号資産に、セキュリティトークンのビジネスが始動へ──改正資金決済法・金商法きょう施行
【参照記事】STO協会とJVCEAが金融庁の認定団体へ

暗号資産取引所BitMEXが日本市場から撤退

最大100倍のレバレッジをかけられることが特徴の暗号資産取引所BitMEXが、5月1日をもって日本の居住者に対する利用制限を実施すると発表しました。

公式声明では、先述した改正資金決済法および改正金融商品取引法の影響によるものと説明しています。特に、改正金融商品取引法によりデリバディブ取引を提供する際に登録が必要になったことが、大きく影響していると考えられます。

今後については、規制当局との協議を続け、進展がみられた際には改めてアナウンスを行うと発表しました。

【参照記事】日本の居住者の皆様へ – BitMEXブログ

a16zの巨額2号ファンドが組成

4月上旬に報じられた、世界最大手のベンチャーキャピタルAndreessen Horowitz(a16z)の2号ファンド「Crypto Fund II」が4月30日、無事組成されました。なおファンド規模は、当初予定されていた4.5億ドルを上回る5.15億ドルで着地しています。

世界で最も著名なベンチャーキャピタルの1つであるa16zは、以前より暗号資産・ブロックチェーン領域に特化したファンドを運営しています。1号ファンドのポートフォリオには、CoinbaseやMakerDAO、Dapper、DFINITY、dY/dXといった、現在の各領域をリードするプロジェクトが名を連ねています。

公式ブログでは、今回の2号ファンドについて主に次の領域を投資対象にすると説明されています。

  • 次世代決済(Next Generation Payments)
  • SoV(Modern Store of Value)
  • DeFi(Decentralized Finance)
  • 新たなマネタイズモデル(New Ways for Creators to Monetize)
  • Web3.0

いずれもブロックチェーンを活用した未開の領域であり、今後の市場開拓に大きな期待が寄せられそうです。

【関連記事】4月前半の暗号資産・ブロックチェーン業界をおさらい
【参照記事】Crypto Fund II – a16z
【参照記事】米大手VC仮想通貨ファンド「Crypto Fund II」が最終募集を完了、550億円規模に

NASDAQがR3と提携

米国に拠点を置く世界最大手の新興企業株式市場のNASDAQ(ナスダック)が、同じく米国拠点のブロックチェーン企業R3との提携を発表しました。今回の提携により、デジタル資産プラットフォームの開発に着手するといいます。

新たに開発されるプラットフォームは、R3の提供するブロックチェーン「Corda(コルダ)」によって構築されます。このシステムを通して、デジタル資産の発行や取引、決済、保管などの機能がサポートされる予定です。

今回の提携に伴い、NASDAQの既存取引基盤である「NFF(Nasdaq Financial Framework)」へ、Cordaが統合されるといいます。これにより、取引のマッチングエンジンや監視機能、データ分析といったシステムの互換性が実現されます。

R3の提供するCordaは、コンソーシアム型のブロックチェーンとして金融領域への活用が進んでいます。今回のNASDAQだけでなく、これまでにHSBCなどの大手金融機関でも導入が発表されてきました。さらに日本では、SBI R3 JapanというSBIホールディングスを筆頭株主とした合弁企業も設立されています。

NASDAQのデジタル資産責任者を務めるJohan Toll氏によると、今回のR3との提携は非独占的なものであり、今後もR3以外のブロックチェーン企業との協業を模索していくといいます。

【参照記事】ナスダックがR3と提携 「デジタル資産市場プラットフォーム」構築へ
【参照記事】Why Nasdaq is working with R3 to issue digital tokens

TelegramはICO資金を返還

約4億ものユーザー数を誇る匿名メッセージングサービスのTelegram(テレグラム)が、2018年にICOで調達した資金の72%を投資家に返還する方針を固めたと発表しました。

Telegramは、暗号資産界隈で最も人気のあるメッセージングサービスの1つです。2018年にはICOを実施し、当時史上最高額となる約17億ドルもの巨額資金を調達しました。

しかしながら、このICOが未登録業者による証券の販売行為であるとして米国証券取引委員会(SEC)の指摘を受け、ネットワークのローンチを2度に渡り延期しています。その結果、事前に定めていたローンチ時期を過ぎてしまい、調達した資金の一部を返還することに決めたのです。なお返還額は、72%に相当する約12億ドルと公表しています。

返還の最大の要因は、SECとの問題を解決できないことによる、独自トークン「Gram」の発行ができない点にあります。ICOで購入したトークンをいつまで経っても使用できない状況には、投資家からも多くの不満が集まっていたことでしょう。

なお、次のネットワークローンチ時期は1年後の2021年4月に設定されています。

【参照記事】Telegram Caves to US Regulators: Delays Blockchain Launch, Offers to Return $1.2B to Investors
【参照記事】Telegram offers investors refund from $1.7 billion token sale

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。